第3章「遺伝情報の発現」

「高校生物」半保存的複製の実験・図・計算の典型問題を解説

この記事では、高校生物の第3章「遺伝情報の発現」に登場する“半保存的複製の実験問題(メセルソンとスタールの実験問題)”について解説を行っています。日常学習のお役に立てたら幸いです。

問題

では、まず問題を解いてみましょう。下のスライドが問題用紙になります。標準解答時間は15分です。15分経っても解けなかった場合は、解答と解説を見ましょう。

スライド1:半保存的複製の実験の問題スライド1:半保存的複製の実験の問題

難しかったでしょうか。問1の穴埋めは基本なので簡単だったと思いますが、問2・問3・問4で苦戦したと思います。特に問3と問4は数学を用いるので、答えることができなかった方もいるでしょう。しかし、いずれの問題も典型問題なので、必ず解けるようになるために、以下の解答・解説を確認しましょう。

解答

問1の答え

(1):半保存的複製、(2)・(3):メセルソン、スタール(順不同)

問2の答え

0回:③、1回:②、2回:④、3回:④、4回:④

問3の答え

スライド2:問3の答え(半保存的複製の実験でのn回分裂後の本数)スライド2:問3の答え(半保存的複製の実験でのn回分裂後の本数)

問4の答え

軽いDNA:中間のDNA:重いDNA=2n-1-1:1:0

解説

問1.半保存的複製と研究者の語句を答える基本問題!

問1の問題文

DNAの複製様式については、保存的複製、分散的複製、( 1 )の説があったが、
( 2 )と( 3 )による実験によって( 1 )が正しいことが証明された。…。

この問題は知識問題です。半保存的複製に関わる生物用語を答える基本問題でした。

答えを簡単にまとめます。DNAの複製様式は“半保存的複製”であり、“メセルソン”と“スタール”の2名の研究者によって証明されました。その際の実験の手順は、設問にあるようなものでした。

半保存的複製のイメージが必要な方は、下のスライド3を見てください。イメージとして理解が深まると思います。

スライド3:半保存的複製のイメージスライド3:半保存的複製のイメージ

スルーしてしまいましたが、半保存的複製が証明される以前は、“保存的複製”と“分散的複製”も説として挙がっていました。念のため、保存的複製と分散的複製のイメージも紹介しておきます。

スライド4:保存的複製と分散的複製のイメージスライド4:保存的複製と分散的複製のイメージ

問2.分裂回数とバンドの関係を答える応用問題!

問2の問題文

…、14N培地での大腸菌の分裂回数が、0回、1回、2回、3回、4回のそれぞれの場合、実験後の線の位置は図2の①~⑥のうちどれになると考えられるか。

この問題は考察問題&図の読み取り問題です。DNAの窒素が15Nに置き換わった大腸菌が14Nの培地で分裂すると、密度勾配遠心後どの位置にDNAのバンド(横線)ができるかが問われた問題でした。

まず最初に理解すべき点は、図1で3つある線(バンド)のそれぞれが何を示すかということです。まとめると、下のスライド5のようになります。

スライド5:図1の線(バンド)の示す意味スライド5:図1の線(バンド)の示す意味

改めて文章でまとめると、

軽いDNA:二本鎖DNAの構成元素である窒素は、すべて14N。

中間のDNA:二本鎖DNAの構成元素は、片方のヌクレオチド鎖では14Nであり、もう片方のヌクレオチド鎖では15Nである。

重いDNA:二本鎖DNAの構成元素である窒素は、すべて15N。

となります。

次に必要となる知識は、半保存的複製のイメージになります。下のスライド6は、問題文の実験における分裂3回目までのDNA増幅のイメージ図になります。

スライド6:15Nの大腸菌を14Nの培地で分裂させたときのDNA複製のようすスライド6:15Nの大腸菌を14Nの培地で分裂させたときのDNA複製のようす

※スライド3にあるように、複製の際は分離した一本鎖DNAを鋳型にして新しいヌクレオチド鎖が合成されることに注意しましょう。また、一度の分裂で本数が2倍になっていますね。

問題文の実験において大腸菌の分裂は14Nで行われるので、新しく合成されるヌクレオチド鎖の構成窒素はすべて14Nになります。1回目の分裂で14Nと15Nから成る『中間のDNA』が現れ、2回目以降の分裂で14Nだけで成る『軽いDNA』が増えることがわかります。

では、スライド6の図をもとに、各分裂回数後の『軽いDNA』・『中間のDNA』・『重いDNA』の有無を見てみましょう。まとめ直したものが、下のスライド7になります。

スライド7:各分裂回数後の、各重さのDNAの有無スライド7:各分裂回数後の、各重さのDNAの有無

スライド7はスライド6と比較して見るとわかりやすいです。少なくとも3回目までの大腸菌分裂については、比較して有無を答えることができるでしょう。4回目以降とn回目においては、問3を解答することができる方にとっては理解できると思います。ここでは一度、説明を保留にしたいと思います。

ようやく解答を説明できる用意が整いました。“スライド5における線(バンド)の意味”と“スライド7における各分裂回数における各重さのDNAの有無”が分かれば、図2において①~⑥のうちどれを選べばよいかを答えることができます。“その重さのDNA”があると線(バンド)ができるので、各回数において適切な線が描かれている選択肢を選べばよいでしょう。例えば2回目において、スライド7で『軽いDNA』と『中間のDNA』があると導いたので、図2の④を選ぶ、といった具合になります。

ちなみに、2回目以降の解答が④で同じであることは、問題文に『重複して選択してもよい。』とあるので問題ありません。

じつに長い説明で、大変失礼しました。

今回は問題ではDNAの重さを『軽い』・『中間』・『重い』と表現しましたが、入試問題では他の表現方法もあります。よく見かけるのは、以下のようなものです。

  • 軽い:14N-14N
  • 中間:14N-15N(あるいは逆の表記)
  • 重い:15N-15N

これらの表現方法は難しく見えますが、DNAの片方の鎖の窒素の重さを表現しているだけです。15Nの培地で育った大腸菌のDNAは15N-15Nとなり、14Nの培地で1回分裂すると14N-15NのDNAが生じ、そして2回目以降の分裂で14N-14NのDNAが生じるという具合になります。こんな感じで略記させてもらいましたが、詳しい解説が欲しい方はコメントでご要望ください。

記述形式の問題になると、解答で線(バンド)を描くこともあります。その場合に備えて、実際に描けるようになりましょう。なお、出題されるときは、図1と図2の関係を示しているように、描くべき線の位置のヒントがあるのが一般的です。

問3.分裂回数と各重さのDNAの本数を答える応用問題!

この問題は考察問題&計算問題です。DNAの窒素が15Nに置き換わった大腸菌が14Nの培地で分裂すると、どのような重さのDNAが何本ずつできるのかを答える問題でした。

※問2の解説を前提に解説します。問2がわかって問3が分からなかった方は、お手数ですが問2の解説も読んでいただくよう、お願い致します。

この問題を解く上で重要なことは、“半保存的複製のイメージ図を問題のページ余白に描くことです。慣れないうちは実際に図を描き、視覚的に本数を数えることで、ミスを防ぐのがよいでしょう。すると、4回目までの分裂では、下のスライド8のようになります。

スライド8:4回目までの分裂を描きだすスライド8:4回目までの分裂を描きだす

※さすがに4回目までは描き出さなくてもよいかもしれませんね…。

本数と重さの状態を描き出したところで、1~4回目の『軽いDNA』、『中間のDNA』、『重いDNA』の本数は数えればわかります。整理すると、スライド9のようになります。

スライド9:DNAの本数を数えて答えるが、n回目は特別スライド9:DNAの本数を数えて答えるが、n回目は特別

スライド9にあるように、1~4回目は数えて答えることができますが、n回目に関しては予想を立てて計算する必要があります

『中間のDNA』と『重いDNA』に関しては、回数ごとに変化が見られないため、そのまま答えてよいでしょう。n回目の『中間のDNA』は2本、『重い』DNAは0本です。これは当然のことで、以下のことが理由に挙げられます。

『中間のDNA』は、15Nのヌクレオチド鎖を鋳型にしなければ生じない。15Nのヌクレオチド鎖は最初の2本だけであり、その後の分裂では14Nしかないため、15Nのヌクレオチド鎖はずっと2本のままである。よって、分裂をいくら繰り返しても結果生じる『中間のDNA』は2本である。

『重いDNA』は、分裂を繰り返しても存在しない。15Nのヌクレオチド鎖はあるが、培地には14Nしかないため、『重いDNA』が生じることはない

最後に『軽いDNA』が難問として立ちはだかります。難しさの理由は、ここで数学Bで習う“数列”の知識を必要とすることが挙げられます。

ざっくりと説明すると、下のスライド10がヒントになります。

スライド10:n回目の軽いDNAは等差数列で導くスライド10:n回目の軽いDNAは等差数列で導く

上記スライド10のように、“等差数列”を使ってn回目の『軽いDNA』の本数を導くことになります。これくらいしか説明できませんが、数学の教員免許は持っていないのでご容赦ください。

「等差数列かよ…、なんで高校生物に…。」と思うかもしれませんが、数学は科学で欠かせないものであり、高校生物でも高校で習う範囲までの数学が問われることがあります。また、中学理科、高校化学基礎の知識も高校生物に登場するので、分野横断的な学習も必要です。

問4.DNAの本数を比にする数学的な問題!

問4の問題文

問3のn回目において、軽いDNA・中間のDNA・重いDNAの本数の比はどのようになるか、答えなさい。

この問題は数学的な問題です。問3のn回目の各重さの本数を比に置き換える問題でした。

★問3で求めたように、n回目の各重さのDNAの本数は、

  • 軽いDNA=2n-2(本)
  • 中間のDNA=2(本)
  • 重いDNA=0(本)

となっている。

ここでもやはり数学の知識を必要とします。数学Ⅰの指数の割り算(商)です。ヒントを示すと、下のスライド11のようになります。

スライド11:n回目の比の求め方(指数の商)スライド11:n回目の比の求め方(指数の商)

問3の末尾と同じ言い分ですが、数学の教員免許は持っていないので、これくらいの説明でご容赦ください。

総括

管理人の感覚では、今回紹介した半保存的複製の典型問題をあまり難しく思っていませんでした。しかし、いざ記事をつくり始めると、解説をつくることにかなり手がかかりました(特に問2)。本質的に理解するためには、細かい点をしっかり理解しないといけないことが改めてよくわかり、今でもなお多くの受験生が難しく感じることもわかったような気がします。理解するのは、そこそこ難しいです。

なお、高校生物の教科書では、半保存的複製は発展扱いになっていることもあります。現課程の教科書では“分子レベルのDNAの挙動”の方がメインになっており、そっちの方が重要度は高いと言えるでしょう。下のリンクでは、“DNAの構造”と“DNAの複製”を解説していますので、合わせて勉強するとよいと思います。

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おわりに

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以上でこの記事は終わりです。ご視聴ありがとうございました。

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