第4章「遺伝情報の発現と発生」 PR

「高校生物」ウニの受精過程と多精拒否の詳細をわかりやすく解説

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この記事では、高校生物の第4章「生殖と発生」で登場する“ウニの受精過程”と“ウニの多精拒否”をわかりやすく解説します。

なお、高校生物の教科書だけでは知識が断片的でわかりにくいので、ギルバート発生生物学という専門書を参考にしています。

教科書よりも詳しく解説しているので、一度流れを理解したら教科書レベルまで戻るとよいでしょう。

管理人の勉強不足なところが多くあり、スライド8~10あたりを修正しました(2021/3/13)。記事中に誤りがあった場合は、ぜひご指摘ください。

ウニの卵の構造

ウニの卵の断面図は、下のスライド1のようになっています。

スライド1:ウニの卵の構造スライド1:ウニの卵の構造

名称を整理しましょう。

  1. ゼリー層:卵を覆うゼリー状の構造。卵を保護し、先体反応を引き起こす物質を含む
  2. 卵黄膜:卵膜の一種。卵の細胞膜の外側にあって卵を包む膜。
  3. 表層粒:ウニなどの卵の表層にみられる顆粒。表層粒から放出される物質によって受精膜の形成が進む

ちなみに、ウニの卵は、次のような性質があります。

  1. 等黄卵:卵黄が卵全体に均一に広がっている。
  2. 無黄卵:卵黄がほとんどない。

つまり、卵黄はほとんどなく、わずかにある卵黄は卵全体に均一に広がっているということになります。

なお、卵内には初期の発生をつかさどる物質として、mRNAタンパク質が含まれています。これらの物質は、母性因子(または母性効果因子)と呼ばれます。

卵は、その性質によって分類が変わります。

卵黄の分布のしかたで分ける場合

  1. 等黄卵:卵黄が卵全体に均一に分布している。
  2. 端黄卵:卵黄が卵内の一部に偏って分布している。
  3. 心黄卵:卵黄が細胞の中央に集まって分布している。

卵黄の量で分ける場合

  1. 多黄卵:鳥類などのように卵黄を多量含む場合を指す。
  2. 中黄卵:カエルなどのように卵黄を中程度含む場合を指す。
  3. 無黄卵:ウニなどのように卵黄がほとんどない場合を指す。

ウニの精子の構造

ウニの精子の断面図は、下のスライド2のようになっています。

スライド2:ウニの精子の構造スライド2:ウニの精子の構造

ウニの受精過程

※情報の正確性を追求しましたが、書籍での扱いが曖昧だったので信憑性に欠けるところがあるかもしれません。誤りがある場合、コメントにてご指摘いただけると幸いです。

1.精子が卵のゼリー層に接触

ウニ精子がウニ卵のゼリー層に接触する。

スライド3:精子が卵のゼリー層に接触するイメージスライド3:精子が卵のゼリー層に接触するイメージ

2.ゼリー層の分解

ウニ精子の先体がエキソサイトーシスをおこし、先体の内容物を放出する。

先体の内容物はタンパク質分解酵素などであり、ゼリー層を分解する。

スライド4:タンパク質分解酵素によるゼリー層の分解スライド4:タンパク質分解酵素によるゼリー層の分解

3.先体反応

先体と精核の間にあったアクチンが重合し、アクチンフィラメントを卵黄膜に向かって伸ばす。

こうしてできた突起は、先体突起と呼び、先体突起が伸びるまでのここまでの反応を先体反応という。

スライド5:先体反応が起こるスライド5:先体反応が起こる

4.受精丘の発生と早い多精拒否

先体突起にはバインディンというタンパク質があり、先体が伸びると卵黄膜表面に存在する精子結合受容体に結合する。

スライド6:バインディンと精子結合受容体の結合スライド6:バインディンと精子結合受容体の結合

この複合体の作用によって、精子と卵の細胞膜が融合し、受精丘という小さなふくらみが生じる。

スライド7:細胞膜の融合による受精丘の形成スライド7:細胞膜の融合による受精丘の形成

このときに、海水中のNaが卵細胞膜貫通タンパク質を通って卵内に入り込み、卵の膜電位の変化による「早い多精拒否」がおこる。

5.表層反応と遅い多精拒否

バインディンと精子結合受容体の複合体は、卵内の小胞体のCa2の放出も促進する。

このCa2により表層粒がエキソサイトーシスをおこし、細胞膜と細胞膜のあいだに内容物を放出する。このことを、表層反応という。

スライド8:表層反応による受精膜・囲卵腔・透明層の形成スライド8:表層反応による受精膜・囲卵腔・透明層の形成

表層粒には水分を含みやすい糖が含まれており、その糖が水分を含むことなどにより卵黄膜は細胞膜から引き離されて受精膜になる。

これは遅い多精拒否である。

また、このときに細胞膜を覆う透明層ができ、透明層と卵黄膜の間には囲卵層ができる。

6.精核の放出

精子からは、核、中心体、ミトコンドリアなどが、卵内に放出される。しかし、核と中心体以外は卵内で分解される。精子の中心体は精子星状体となる。

スライド9:精核と中心体は卵内に残るスライド9:精核と中心体は卵内に残る

7.精核と卵核の融合(受精の完了)

精核と卵核が融合すると、受精は完了となる。

スライド10:ウニの受精卵の構造スライド10:ウニの受精卵の構造

ウニの卵の多精拒否

1.早い多精拒否

(準備中)

※電気的な多精拒否で、受精丘が形成されるときに海水中のNa+が卵内に入り込んで卵の膜電位が変化することで生じる。人間の感覚に例えると、『静電気が起きたときに思わず手を引っ込めること』に近いか?

2.遅い多精拒否

(準備中)

※物理的な多精拒否で、受精膜の形成によって生じる。例えるなら、『壁で防御』という感じか?

総括

ウニの受精過程は、生殖と発生の中でも理解に難しいテーマです。教科書ではページ数が限られているため、反応の一部が省略されたり連続する反応を1つの図におさめたりしています。このことがウニの受精の難易度を高めており、多くの受験生が敬遠してしまう理由になっています。

この記事で紹介したように、1つ1つの反応をしっかりと理解して、ストーリー立てて説明できることが望ましいです。難しいですが、時間を割いて理解しましょう。

おわりに

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以上でこの記事は終わりです。ご視聴ありがとうございました。

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POSTED COMMENT

  1. awa より:

    非常に分かりやすいです!!進入した精子の頭部から精核と中心体が放出されて,精子星状体となって…のくだりも加わると,嬉しいです!

    • シカマル より:

      awa 様
      閲覧およびコメントありがとうございます。

      わかりやすいと言ってもらい、嬉しい限りです。
      当記事を利用していただき、誠に感謝します。

      ご指摘の点については、改善内容として更新させていただきます。
      具体的にいつまでに改善できるかは断言できませんが、善処します。

      今回のコメントを受けて記事を見なおしましたが、スライド8に誤りがありました。
      図において、“囲卵腔”と“透明層”の扱いを間違っておりました。
      この点については、修正した画像をアップロード済みです。
      誤った内容を記事にしていたことについては、awa様をはじめ他の皆様にもお詫び申し上げます。

      今後とも高校生物の学び舎をよろしくお願い致します。
      管理人シカマルより

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