第3章「生物の体内環境」

「高校生物基礎」腎臓のイヌリン濃縮率や原尿量などの計算問題の解き方

今回は、「生物基礎」の第3章“生物の体内環境”に登場する腎臓における尿の生成の計算とグラフの問題の解き方を紹介します。濃縮率、原尿量、水の再吸収率、物質の再吸収量、質量パーセント濃度などの典型的なテーマについて、ポイントをわかりやすくまとめています。

演習問題

まずは演習問題として、下のスライド1にある問題を解いてみましょう。標準解答時間は20分です。解けない場合は、すぐに解説を見て解き方を確認しましょう。

スライド1:腎臓の尿生成の計算とグラフの問題スライド1:腎臓の尿生成の計算とグラフの問題

スライド1の下の方にポイントを書いておきました。進学校での定期テストでは、問5くらいまでは定番だと思います。腎臓の尿生成の問題は解き方さえわかれば簡単なので、解答・解説を確認していきましょう。

解答

問1.120倍

問2.1200mL

問3.99.2%

問4.4.5mg

問5.タンパク質は腎小体で濾過されないので尿にも含まれない。グルコースは腎小体で濾過されるが細尿管で全て再吸収される。

問6.0.1%

問7.300mg

解説

問1.濃縮率の求め方

この問題は、計算問題です。ある物質の濃縮率とは、

その物質の濃縮率=その物質の尿中の濃度 ÷ その物質の原尿中の濃度

という感じになります。下のスライド1の右上の端に書いてある分数そのものです。濃縮率を求める際は、この計算さえできれば、全く問題ありません。

もし、「濃縮率とはなにか?」についてより深く学習したい場合は、下のスライド1を参考にしてもらうとよいかと思います。単純な計算式よりも進んだ理解ができると思います。

スライド2:濃縮率とは?スライド2:濃縮率とは?

左と右のビーカーにはイヌリン溶液が入っています。両方とも12mgのイヌリンが入っていることには変わりはありませんが、左のビーカーには120mLの水が、右のビーカーには1mLの水が入っています。もし、はじめの状態が左のビーカーで、水がたくさん蒸発して右の状態になったのだとしたら、何倍に濃縮されたと言うことができるでしょうか?感覚で答えてもらって構いません。

おそらく、120倍、と答えるのではないでしょうか。その「120倍」というのが濃縮率になります。つまり、「前と後で濃度が何倍に濃縮されたのか?」という質問に対しての回答が濃縮率ということになります。

ちなみに、管理人は「濃縮率を説明せよ。」という問題は見たことはありません。なので、テスト対策だけなら、最低限計算式だけを覚えていればほぼ問題ないと思われます。

濃縮率=尿中の濃度÷原尿中の濃度

問2:原尿量の求め方

この公式は、計算問題です。原尿の量の求め方も、公式のようなもので、

原尿量 = 尿量 × 再吸収されない物質の濃縮率

というように表すことができます。この計算式さえできれば、しっかり答えを導くことができます。10分間で10mLの尿が生成されているので、計算式は、

10分間の原尿量 = 10mL × 120 = 1200mL

となります。

ちなみに、「再吸収されない物質の濃縮率」は問1で解答したイヌリンの濃縮率のことになります。腎臓の尿生成の問題で原尿量を求める際は、ほとんどがイヌリンの濃縮率を使います。その理由は、再吸収されない物質の濃縮率を使うことが原尿量を計算するために必須だから、ぐらいの認識で構いません。

ちなみにまたですが、原尿量をどのようにイメージすればよいかと悩んでいる方には、下のスライド3で理解を深めることをお勧めします。

スライド3:原尿量とは何を指すのか?スライド3:原尿量とは何を指すのか?

スライド3の左上方に「何mLの水があるか?」という質問がありますが、これが原尿量のことを指します。わかっている情報は、蒸発前のビーカーのイヌリン濃度が0.1mg/mL、蒸発後のビーカーでは水の量が1mLでイヌリン濃度が12mg/mL、濃縮率が120倍です。さて、蒸発前のビーカーの水量を指す原尿量の値はいくつでしょうか?

先のスライド2を見て予想が立ったかもしれませんが、原尿量はスライド3の場合は120mLです。蒸発後の水量1mLに濃縮率120倍を掛けてあげれば、蒸発前の水量として120mLが求まります。この計算方法が、原尿量の求め方になります。

難関大学を目指している人は、原尿量計算に用いる物質の特徴を覚えておくことをお勧めします。その特徴は、①体内で再吸収されない、②体内で分泌されない、の2点になります。特徴を答えさせる場合、2つ答えさせる場合が見られるので、両方覚えておいた方がよいでしょう。

原尿量=尿量×再吸収されない物質の濃縮率

※テストには関係ありませんが、1日の原尿の量はヒト成人で180Lほどにもなります。ヒトの血液量が体重の13分の1程度(これは暗記)なので、60kgのヒトで4.6kgほどになります。水と同密度として考えると血液量は4.6Lということになるので、血液が1日で約39回腎臓を通過していることになると考えられますね。

問3.水の再吸収率の求め方

この問題は、計算問題です。水の再吸収率の計算も公式がありますが、この式は考察することで簡単に導くことができます。

まずは、下のスライド4を見てみましょう。下の枠にある赤文字が公式です。この公式を導くためには、上にある図を見て理解すればよいと思います。なお、ここでは1分間あたりとして考え、原尿量は120mL、尿量は1mLとしています。

スライド4:水の再吸収率の計算方法スライド4:水の再吸収率の計算方法

もともとの原尿量は120mLでしたが、排出された尿の量は1mLになります。よって、再吸収された原尿の量は119mLとなります。あとは、原尿量や尿量のことを水の量として捉えて計算するだけです。すると、もとあった水量が120mL、再吸収した水量が119mLになるので、計算するだけになります。なお、単位は%になります。

このように、公式を覚えないでよいものに関しては、式の導き方を理解しておくだけでよいです。

水の再吸収率は、公式を暗記するのではなく、解き方を理解して式を導けるようになるのがよい。

問4.クレアチニンの再吸収量の計算方法

この問題は、計算問題です。クレアチニンの再吸収量に関しても、公式を使うというよりは解き方を理解することが大事になります。まずは、下のスライド5を見てみましょう。

スライド5:クレアチニンの再吸収量の求め方スライド5:クレアチニンの再吸収量の求め方

再吸収量を計算する式は、すごく簡単なものです。それは、

再吸収されたクレアチニン量  =原尿中のクレアチニン量 ー 尿中のクレアチニン量 …式A

というように表すことができます。よって、原尿中と尿中のクレアチニン量がわかればよいのです。その求め方は、次のようになります。

  • 原尿中のクレアチニン量は、原尿量が10分間で1200mL、原尿中のクレアチニン濃度が0.01mg/mLなので、1200×0.01=12mgが相当する。
  • 尿中のクレアチニン量は、尿量が10分間で10mL、尿中のクレアチニン濃度が0.75mg/mLなので、10×0.75=7.5mgが相当する。

あとは、上の式Aに当てはめて、12-7.5=4.5mgが再吸収されたクレアチニン量となります。

この解き方を理解できたのであれば、試しにナトリウムイオンでも練習してみましょう。もし、0.5mgと答えてしまった場合は、もう一度解き方の確認をしましょう。なお、解答は3565mgです。ナトリウムイオンは99%近く再吸収されるということがわかりますね。

ある物質の再吸収量=原尿中のその物質の量ー尿中のその物質の量

問5.腎臓におけるタンパク質とグルコースの挙動

この問題は記述問題です。教科書に書いてある内容を、制限文字以内でコンパクトにまとめる文章構成力が必要になります。下のスライド6を見て、要点を確認しておきましょう。

スライド6:腎臓におけるタンパク質とグルコースの挙動のまとめスライド6:腎臓におけるタンパク質とグルコースの挙動のまとめ

注意事項を2点挙げておきたいと思います。

  • タンパク質が濾過されない理由は、タンパク質分子が大きいため糸球体にある孔を通ることができないためである。
  • グルコースは細尿管(腎細管)ですべて再吸収されるが、血中グルコース濃度が高いときは尿中に排出される。(このことは、問7で知ることになります。)

今回は記述問題にしましたが、文系がセンター試験で生物基礎を選択する場合は正誤問題として登場するので、教科書に書いてある事柄は細かいところまで確認しましょう。

腎臓でのタンパク質とグルコースの挙動は、しっかりおさえておくこと!

問6.質量パーセント濃度をどのように求めるか

この問題は、計算問題です。質量パーセント濃度は中学校理科で学ぶものであり、高校生物基礎で習い直すものではありません。なので、改めてこのような問題として登場した場合に解くことができない人が非常に多いです。わからなかった人は、しっかり確認しましょう。

下のスライド7を使って解説を進めていきます。

スライド7:グルコースの質量パーセント濃度の求め方スライド7:グルコースの質量パーセント濃度の求め方

まず基本として、質量パーセント濃度がどのような公式だったのかを確認するところから始まります。スライド7にあるように、質量パーセント濃度の公式は、

質量パーセント濃度=溶質(g)÷溶液(g)×100

というものです。このとき、溶質と溶液の単位がgであることに注意しなければなりません。また、問題の解き方としては、溶質をグルコース、溶液を血しょうに置き換えて考えていきます。

では、まず何から始めればよいのでしょうか。手順としては次のようになります。

  1. とりあえず血しょうの量を決める。ここでは(先読みして)、1000mLとする。
  2. 問題文に血しょうは水と同密度として扱うと書いてあるので、水の密度1g/1mLを使うと、血しょうの質量は1000gであることがわかる。
  3. 血しょう1000mLに含まれるグルコースの質量は、1000×1=1000mgである(この式の1は血しょう中のグルコース濃度のこと)。1000mg=1gなので、グルコースの質量は1gであることがわかる。
  4. 血しょうの質量1000gとグルコースの質量1gを質量パーセント濃度の公式に代入すると答えを求めることができる。

問6の解き方は以上になります。

教科書や参考書、問題集では、このような問題はあまり見かけません。では、どんなときに登場するのかというと、センター試験スタイルの問題で見かけられます。問題の中で、何も前触れがなく「ヒト血中のグルコースの質量パーセント濃度は0.1%である」ことの正誤を答えさせられます。同様に「ヒト血中のグルコース濃度は1mg/1mLである」ことの正誤を答えさせる場合もあります。なので、文系でもこのような計算方法を知っておくと役に立つと思われます。どうしても苦手な人は、ヒトの血中グルコース濃度とその質量パーセント濃度を暗記しておくとよいでしょう。

濃度から質量パーセント濃度を求める、または質量パーセント濃度から濃度を求める計算方法を理解しておくと、役に立つことがある。

問7.再吸収されるグルコースの最大量は一定

この問題は、計算(とグラフ)の問題です。難易度の高い問題なので、ここで解き方を知りましょう。

再吸収されるグルコース量の最大値は、表2のそれぞれの濃度で、血しょう中のグルコース量から尿中のグルコース量を引くことによってわかります。計算した結果が、下のスライド8になります。

スライド8:血しょう中と尿中のグルコース量を計算して引き算するスライド8:血しょう中と尿中のグルコース量を計算して引き算する

スライドを見て気づいたと思いますが、再吸収されたグルコース量は300mgを超えません。よって、再吸収されるグルコース量の最大値は、300mgだと考察することができます。

ちなみに、スライド8の結果をグラフに起こした場合、下のスライド9のようになります。

スライド9:再吸収されるグルコース量はグラフではこうなるスライド9:再吸収されるグルコース量はグラフではこうなる

①のグラフと②のグラフの間が最大になったときの値が、再吸収されるグルコース量の最大値と言うことができます。わかりにくいかもしれませんが、最大値はある濃度以上で変わらないことがグラフでわかります。

問7の解き方は以上なので、わからなかった人は忘れたころにもう一度練習しておくとよいでしょう。

最大値とはいっても量を求めることには変わりがないので、冷静にそれぞれの濃度での再吸収されたグルコース量を計算してみること。

総括

腎臓の計算問題は今回の記事で紹介したようなワンパターンなものが多いです。この記事の内容を理解しただけで、この手の問題は解くことができるようになると思います。その一方で、勉強していない人にとっては解けない問題でもあります。生物基礎を習う高校1年生ならば2学期の定期テストあたりで問題として取り組まなければならないはずなので、必ず演習しておきましょう。

ちなみに、腎臓の問題は計算問題だけではありません。腎臓の部位の名称を答える問題や、ホルモン分泌をテーマとした問題もあります。腎臓の問題は手広く取り組むのがよいでしょう。

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