第3章「生物の体内環境」 PR

「高校生物基礎」ホルモンの分泌とフィードバック調節の問題の解き方

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今回は、「生物基礎」の第3章“生物の体内環境”に登場するホルモンの分泌とフィードバック調節の問題の解き方を紹介します。ポイントをわかりやすくまとめているので、フィードバック調節がわからなかった人も、これを機に学習してみましょう。

ホルモンの名前を覚えていない人に紹介したい記事

もし、ホルモンの名前をまだうろ覚えなのであれば、先にホルモンの名前と働きの勉強から始めることをおすすめします。下のリンクは、管理人が作ったホルモンの一覧表なので、よければ勉強の役に立ててください。PDFでダウンロードすることも可能です。

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演習問題

まずは演習問題として、下のスライド1にある問題を解いてみましょう。標準解答時間は20分です。解けない場合は、すぐに解説を見て解き方を確認しましょう。

スライド1:ホルモンの分泌とフィードバック調節の問題スライド1:ホルモンの分泌とフィードバック調節の問題

【問3の補足】

管理人の表現がわかりにくく、誤解を招く場合があることがわかりました。

実験で用意したネズミは、

  • チロキシンの合成に必要なヨウ素が欠乏しているネズミ
  • 甲状腺に障害のあるネズミ
  • 脳下垂体に障害のあるネズミ
  • 視床下部に障害のあるネズミ

となっています。

問3では、上記のそれぞれのネズミに実験①または実験②を施した結果を解答して下さい。

どうでしたか? 基本で典型的なテーマですが、難易度はそこそこあります。解けた人も解けなかった人も、解答と解説を見て、解き方を確認しましょう。

解答

解答は、次のスライド2にまとめました。チェックしてみましょう。

スライド2:ホルモンの分泌とフィードバック調節の問題の解答スライド2:ホルモンの分泌とフィードバック調節の問題の解答

では、解説に移りましょう。

解説

問1.単語を覚えていれば答えることができる基本問題!

問題文中の(1)~(5)に、適切な語句を答えなさい。

この問題は知識問題です。単語さえ覚えていれば、悩むことはありません。

ただ、フィードバックに“正”と“負”があることを初めて知った人もいると思います。なので、正のフィードバック調節と負のフィードバックについて、次のスライド3にまとめておきました。

スライド3:正のフィードバック調節と負のフィードバック調節の違いスライド3:正のフィードバック調節と負のフィードバック調節の違い

黄色文字にしているところが重要なところです。これを機に、フィードバック調節の意味を正の場合と負の場合も合わせて覚えておきましょう。

語句を答える問題は基本中の基本なので、教科書に太文字で登場する単語は覚えておこう!また、フィードバック調節には、“正”と“負”の場合があることを知っておこう!

高校生物の第1章“細胞と分子”の“酵素”でも「フィードバック調節」という言葉が登場します。高校生物を勉強する人は、“酵素”のフィードバック調節も誤解なく学びましょう。

問2.記述問題だが、典型的な文で答えることができる!

甲状腺機能低下症は、血液中のチロキシン濃度が下がる病気であり、そのことで体の機能や代謝に異常が生じる。この病気の原因は複数あるが、仮に脳下垂体の障害が理由であるとき、そんな障害が考えられるか。2つ挙げよ。

この問題は論述問題です。「記述問題は難しい…」、と敬遠しがちですが、今回の問2は典型文で書くことのできるタイプの簡単な論述問題になります。

問題文を読み直すと、「甲状腺機能低下症の原因が脳下垂体にあるとき、考えられる障害を2つ述べよ。」というものになります。このとき答えることができるのは、問題文の通り2つしかないのです。

まず、脳下垂体前葉がどのように機能するかについて、スライド4にまとめたので見てください。

スライド4:甲状腺刺激ホルモンが分泌されるしくみスライド4:甲状腺刺激ホルモンが分泌されるしくみ

このように、脳下垂体前葉における甲状腺刺激ホルモンの分泌は、放出ホルモンが受容体に結合して起こる反応です。

では、答えの1つである“放出ホルモンの受容体の障害”について、スライド5にまとめてみます。

スライド5:受容体に異常があるとホルモンは分泌されないスライド5:受容体に異常があるとホルモンは分泌されない

次に、“甲状腺刺激ホルモンの分泌の障害”について、スライド6にまとめてみます。

スライド6:分泌の能力に異常があると、ホルモンは分泌できないスライド6:分泌の能力に異常があると、ホルモンは分泌できない

このように、ホルモンを分泌する器官の障害の多くは、“受容体の障害”と“分泌の障害”の2つを挙げることができます。このことは、知識として知っておくべきなので、今回を機に覚えておくとよいでしょう。テーマは異なりますが、糖尿病の問題でもこの考え方が必要となります。

ホルモンの器官の障害の多くは、感知する部分である“受容体の障害”と、分泌をする部分の障害の2パターンに分けられる。

問3.フィードバック調節の図を書いてチャレンジする!

この問題は考察問題です。甲状腺機能低下症によってフィードバック調節が機能しなくなった場合について、考えることになります。問題と見比べやすいように、改めて問題をスライド7に載せておきます。

スライド7:問3の問題文をもう一度確認スライド7:問3の問題文をもう一度確認

では、まずそれぞれのネズミがどのような状態なのかについてまとめることから始めたいと思います。次のスライド8~スライド11は、健康なネズミと障害を持つネズミのホルモン調節をまとめたものになります。

スライド8:健康なネズミの正常なホルモン調節スライド8:健康なネズミの正常なホルモン調節

このスライド8が、正常なホルモン調節の書き方だとします。

スライド9:甲状腺に障害がある場合のホルモン調節スライド9:甲状腺に障害がある場合のホルモン調節

この場合は、甲状腺に障害があることでチロキシンの分泌が抑制されています。体液中のチロキシン濃度が低下したことから正のフィードバック調節が働き、視床下部で放出ホルモンがたくさん分泌されます。そのことにより、脳下垂体でも甲状腺刺激ホルモンがたくさん分泌されます。なお、ヨウ素が不足しているネズミについても、チロキシンを合成することができていないことから、同じように考えることができます

スライド10:脳下垂体に障害がある場合のホルモン調節スライド10:脳下垂体に障害がある場合のホルモン調節

この場合は、甲状腺刺激ホルモンの分泌が抑制されているのでチロキシンの分泌も抑制されています。体液中のチロキシン濃度が低いことから正のフィードバック調節が働き、視床下部の放出ホルモンはよりたくさん分泌されています。

スライド11:視床下部に障害がある場合のホルモン調節スライド11:視床下部に障害がある場合のホルモン調節

この場合は、視床下部から放出ホルモンが分泌されないので、そのあとのホルモンの分泌が抑制されてしまっています。また、正のフィードバック調節は機能しません。

スライドを4枚も使いましたが、正常な場合と異常な場合のホルモン調節がどのようになっているか理解できたでしょうか?この考え方ができていないと、問3を解くことはできません。わからない人は、繰り返しスライド8~11を見直してみましょう。

さて、そろそろ問題の解説に移りましょう。

まず、実験①の解答(a)~(d)についてです。この空欄には、「それぞれの原因のネズミに対して“何も操作をせずに甲状腺刺激ホルモンの血液中の濃度を測定した”結果、甲状腺刺激ホルモンの血液中の濃度が通常のネズミと比べてどうなのか。」ということを答えることになります。なので、先ほどのホルモン調節のスライドで、単に甲状腺刺激ホルモンがたくさん分泌されているものを選べばよいだけになります。画像が小さいですが、次のスライド12が4つの障害をまとめたものになるので、見てみましょう。

スライド12:ホルモン調節まとめスライド12:ホルモン調節まとめ

甲状腺刺激ホルモンの分泌が多くなっている“1.ヨウ素不足”の場合と“2.甲状腺の障害”の場合が、通常のネズミと比べて甲状腺刺激ホルモンが多くなっているので、答えとなります。

次に、実験②の解答(e)~(h)についてです。この空欄には、「それぞれの原因のネズミに対して、“放出ホルモンを投与した後、甲状腺刺激ホルモンの血液中の濃度を測定した”結果、投与前と比べて、甲状腺刺激ホルモンの濃度がどう変わるのか。」ということを答えることになります。なので、放出ホルモンを投与して甲状腺刺激ホルモンの分泌量が多くなるものを選べばよいだけです。

これもスライド12を見てみると、“4.視床下部の障害”の場合に放出ホルモンが投与されれば、投与された放出ホルモンが脳下垂体に働きかけて甲状腺刺激ホルモンが分泌され、投与前よりも甲状腺刺激ホルモンの量が増える、と考えることができます。これは、次のスライド13のように説明できます。

スライド13:視床下部に障害がある場合に放出ホルモンを投与スライド13:視床下部に障害がある場合に放出ホルモンを投与

ちなみに、視床下部の障害だけが放出ホルモン投与後に甲状腺刺激ホルモンが増えますが、他の場合でも甲状腺刺激ホルモンが増えるのではないかと迷った人が多くいるのではないかと思います。この問題で誤解を生みやすいポイントとして、次のことが挙げられます。

  • たとえ放出ホルモンが多く分泌されている状態でも、さらに放出ホルモンが増えれば、甲状腺刺激ホルモンはさらに増えるのではないか?

この疑問に対する答えは、「甲状腺刺激ホルモンは限界まで増えた状態なので、放出ホルモンが投与されることでさらに増えても、甲状腺刺激ホルモンは増えない。」というものになります。簡単に言うと、「チロキシンが血液中ですごく不足している状態は体にとって緊急の状態なので、限界まで放出ホルモンや甲状腺刺激ホルモンを放出している状態になっている。」と説明することができます。なので、1.ヨウ素の場合と2.甲状腺の障害の場合は投与前後で甲状腺刺激ホルモンの濃度に変化はありません。また、3.脳下垂体の異常の場合は、脳下垂体から甲状腺刺激ホルモンを分泌することができないので、投与前後で変化がないことになります。

ホルモン調節の考察問題の場合は、図を自分で描いてみると考えやすい。なので、図を描けるようになっておこう!

総括

今回の問題について総括するならば、いくつかの点を言うことができます。まず、問1の語句を埋める問題については、全問正解すべきところです。次に、問2の記述問題ですが、これは記述問題というよりは知識問題になるので、ホルモン分泌のしくみをしっかりと知っているかが問われています。問3はフィードバック調節の考察問題ですが、基本をおさえていれば解くことのできる問題でした。

この問題での勝敗の分かれ目は、やはり問3だと思います。生物基礎しか学習していない人にとっては、考察問題は難しく感じるものです。ただ、センター試験で8割を目指すのであれば、このテーマの問題は今回を機にできるようになった方がよいでしょう。

フィードバック調節は皆が一度つまづくところです。焦らず慎重に熟慮して、解けるようになりましょう。

おわりに

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以上でこの記事は終わりです。ご視聴ありがとうございました。

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POSTED COMMENT

  1. たあ より:

    とても役立つサイトをありがとうございます。
    問3についてなのですが、
    チロキシンの合成に必要なヨウ素の欠乏、甲状腺の障害、脳下垂体の障害、視床下部の障害
    はそれぞれその状態のネズミという事ですか?
    あと、aの問題を解くとしたら、
    チロキシンの合成に必要なヨウ素が欠乏しているということは甲状腺からのチロキシンは作れないけどそこに至るまでの視床下部や脳下垂体の機能は普通のネズミと同じですよね?
    そしたら、普通のネズミと比べて変化がないというのが答えではないんでしょうか?

    • シカマル より:

      たあ 様
      閲覧およびコメントありがとうございます。

      まず、お褒めの言葉を頂き、誠にありがとうございます。
      たあ様の成績向上のお役に立つことができれば幸いです。

      続いて、ご質問についてです。

      【一点目】
      実験で用意したネズミの障害は、表中の4種類の障害のうちの1つを持っています。
      なので、ご質問の内容で相違ありません。
      ただし、誤解を招きそうな要素だと判断したので、記事中の問題下に注釈を設けておきました。
      ご指摘いただき、ありがとうございます。

      【二点目_aの問題】
      チロキシンに必要なヨウ素が欠乏しているネズミは、
      ・視床下部の機能
      ・脳下垂体の機能
      の両方とも正常であることについて、ご指摘と相違ありません。
      ただし、
      ・視床下部から分泌されている放出ホルモン
      ・脳下垂体前葉から分泌されている甲状腺刺激ホルモン
      の2つのホルモンは、ご指摘とは異なり、正常個体に比べて多量になります。
      要点は、ご指摘の通りヨウ素不足によるチロキシンの合成不可状態です。
      チロキシンが体内にないことを視床下部が感知し、正のフィードバックが作用します。
      そして、正のフィードバックが作用することが、放出ホルモンと甲状腺刺激ホルモンが多量となる理由となります。
      視床下部と脳下垂体が正常であっても、正または負のフィードバック機構は起こります。
      スライド12を少し変更したので、参考にされて下さい。

      以上になります。
      ご不明な際は、再度ご質問下さい。

      管理人シカマルより

      • たあ より:

        とても丁寧な説明、お返事ありがとうございます。迅速な対応感謝いたします。

        二点目のaについて再び質問すみません。
        それぞれのネズミの状態やフィードバックの仕組みについては理解しております。
        私の質問の仕方が良くなかったみたいでお手数お掛けしてしまい申し訳ないです。
        私はこの問題について繰り返し起こっているフィードバックの状態の実験ではなく、何も起こってない状態での実験の問題だと解釈してしまったので、正のフィードバックが起こる前の状態なら普通のネズミと同じではないかと思ってしまいました。
        この問題では繰り返し繰り返しフィードバックが起きているねずみの、ある一部分で実験を行っただけなので正のフィードバックにより正常値より増えるという理解で宜しいでしょうか?
        また上手く伝えられていなければ申し訳ありません。さらに良い伝え方を考えます。

        • シカマル より:

          たあ 様
          再度のご質問、誠にありがとうございます。

          たあ様のご質問内容を、たぶん理解することができました。
          (先のご質問で把握することができず、申し訳ありませんでした。)
          私もご質問の内容をうまく表現することが難しいです。

          <<<この問題では繰り返し繰り返しフィードバックが起きているねずみの、
          ある一部分で実験を行っただけなので、正のフィードバックにより正常値より、
          増えるという理解で宜しいでしょうか?>>>

          たあ様のこのコメント内容で解釈が合っています。
          ねずみを生きているものとし、既に体内環境が動的であると捉えることが妥当だと思います。

          「思います」と書いた理由について寄り道します。
          当記事で紹介した問題を典型的なものとしていますが、この場合『既に体内環境が動的』であることが前提として答えが作られているようです。
          しかし、今回とは趣向の異なる問題が出題された場合、たあ様が迷った点が正答である可能性もあるかもしれません。
          最近の私は入試問題の分析をほとんど行っていないので、そのようなケースが完全に『ない』とは言い切れないのが現状です…。

          以上の内容でお役に立つことができましたでしょうか。
          疑問が残る場合は、再度ご質問下さい。
          高度な内容になってきたので、私で助力できるか微妙ではありますが…。

          管理人シカマルより

          • たあ より:

            お忙しい中丁寧に対応していただき、ありがとうございました。謎が解決してとてもスッキリしました!
            素敵なサイトに出会えてよかったです、明日テスト頑張ってきます(´˘`*) 本当にありがとうございました!m(_ _)m返信不要ですˊᵕˋ

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