「高校生物は難しいんですか?」、「高校生物で思うように得点できない…。」
このような学生の声を、塾講師時代によく耳にしました。現実問題、高校生物(高校生物基礎ではなく)は、様々な要素が複雑に絡み合っているため、難易度が高いです。
ただ「難しい」ということは安易で無知なので、この記事では高校生物が実際問題どのように難しいのかということを解説したいと思います。
※長文なので、時間があるときにゆっくり読んでください。
データも示しますが、管理人の主観が多分に含まれます。この記事を読んで高校生物の難しさに興味を持った方は、学校や塾の先生にも尋ねてみるとよいでしょう。
また、管理人は高校化学や高校物理に疎いです。なので、一概に高校生物だけが難しいと判断しないようにしてください。
昔は高校の生物は簡単だったらしい(信憑性は不明だが言う人がいる)ので、高校生物が簡単だと安易に言う方に対しては、ここに書いてあることを伝えてみるとよいかもしれません。
また、大学などへの進学に不安を抱いている保護者の方にも、ぜひ読んで頂きたいです。保護者の方の理解を得るために、ここで読んだことを伝える、またはこのページを紹介するとよいでしょう。
平均点の推移
センター試験の平均点は悪くないです
「難しいんだよね?」と管理人に理解を求めてきたかもしれない方には酷な話ですが、過去12年分のセンター試験の平均点を振り返ると、生物だけが特段に悪いということはありません。
次のスライド1は、化学・物理・生物の平均点をグラフ化したものになります。赤線で太く示しているグラフが、生物系の平均点になります。
補足ですが、高校理科は平成27年度を境に試験内容が異なります。平成27年度までは生物Ⅰという旧課程の科目であり、生物Ⅰは理系・文系問わず選択者がいました。平成27年度以降は高校生物になり、理系は高校生物、文系は高校生物基礎を選択するようになりました。
さて、グラフを見てもらって、生物系(生物Ⅰ・高校生物)だけの難しさを主張することはあまり意味がないことを、おわかりいただけたでしょうか。寧ろ、現課程に変わってからは、高校生物の得点は高い傾向にあるのではないか、と思えるようなものになっています。
つまり、高校理系理科三教科について、高校生物だけが特別難しいとは、過去のセンター試験の平均点からは一概には言えないのです。逆に言うと、「それなりの努力をすれば、それなりの結果に到達することができる」、とも言えるかもしれません。
平成30年度大学入学共通テストプレテストでは、高校生物の平均点は(確か)全教科中最下位でした。初年度の高校生物の問題のバランスを整えることは難しいらしく、スライド1の平成27年度の平均点が低いこともその傾向の表れだと思います。ちなみに平成27年度高校生物の平均点には、得点調整が入っています。
更新内容:共通テスト移行後、難易度が劇的に上昇か。
記事更新内容_2023.04.18。
共通テストに移行して3年が経った。平均点の推移を下のグラフで見てみよう。赤いグラフが旧センター試験・現共通テストの高校生物推移である。
(準備中)
共通テスト初年度は非常に高い平均点だったが、2年目から劇的に難易度が上がり平均点はかなり下がっている。そもそもだが、2回行われた共通テストの試行テストの難易度は非常に高く、教育現場から悲鳴が上がるほどだった。それを受けて、初年度は様子見として難易度を下げた、2年目からは試行テストの流れをそのまま採用した、という感じではないかと察する。指導者および受験生が作問側の理想に追いついていないようなものだと感じる。
ここで、令和5年度の得点分布図を見てみよう。下のリンク先には、令和5年度の高校生物と高校物理の得点分布図が点数調整前の数値で載っている。
分布図を見ると、高校生物では30点くらいが最も高い得点率であり、得点60点までで受験者の85~90%を占める。非常に多くの高校生物受験者が苦労したと察する。ちなみに高校生物は、2年連続の歴代過去最低平均点であった。
管理人の得点率は、難易度の高かった令和4年度・令和5年度ともに7割だった。すべての問題をなんとか解くことはできたが見返す時間がまったくなく、一発力を試されたような形だった。(ブランクが長くなってきているので、最近の指導者の得点動向はよくわかっていない。)
高校生物の教科の特性や問題の傾向
高校生物を攻略するうえで先に知っておいてほしいことは、高校生物という教科の特性です。その特性を幅広く見てみましょう。
教科書だけ見ても、いまいち何が大事なのかわからない
高校生物の教科書を片手に少し授業を受けただけでもわかりますが、高校生物の教科書のほとんどは文章と図です。文章に含まれる太文字が重要であることは簡単にわかりますが、図の重要性は初見ではほとんどわかりません。また、高校化学や高校物理の教科書にあるような例題・基本問題・発展問題は、高校生物の教科書ではあまり見かけません。
「単語だけを覚えればいいのかな?ラッキー!」と最初のうちは思うかもしれません。しかし、センター試験以上の難易度の受験をするのであれば、これは誤解になります。最終的に何が大事なのかは言うまでもなく、「教科書だけに注目するなら、書いて(描いて)あること全部」です。
多くの学生が、この残酷な現状に受験が近づいてきてから気づきます。自分で気づく人、学校の先生から聞いた人、塾の先生から聞いた人など様々いますが、高校生物の勉強を開始した時点で知らない方は思いの外いるものです。最初から知っている高校生は、ラッキーだとも言えます。
とりあえず定期テスト対策に学校の問題集をやるのだが…
教科書の何が大事なのかはわからなくとも、高校生には“定期テスト”がやってきます。
多くの学校では副教材として問題集を買うことになります。問題集は学校専売であることが多く、リードα、セミナー、センサーなど例を挙げればたくさんあります。そして、学校の定期試験では、この問題集が試験範囲になることが多々あります。
ゆえに、多くの高校生は、問題集を試験前に開いて勉強することになります。そして、教科書を読み、ノートを振り返り、問題にチャレンジし、定期試験に臨みます。
ここで大事なことを1つ言いますが、問題集を使った演習は、高校生物の場合、特に受験対策に効果的です。問題集にある問題は、大学受験で出た内容から抜粋されたものが多いからです。なので、定期テストの範囲が問題集になっているのは、非常によいことになります。
しかしお気づきのように、問題集にある問題は多様でなかなか難しいのです。
計算・グラフや図の読み取り・実験・考察・論述・作図、他
高校生物の問題集がなぜ難しいのか…。これを知ることが、“大学入試における高校生物の難しさ”を理解する最初の一歩になります。
ではここで、高校生物の定番問題を紹介します。次の記事は、当サイトのまとめ記事です。
(※現在リンク切れ)
管理人が上の記事で紹介している定番問題は、およそ70問あります。しかし、管理人の主観では、定番問題と言えるものは、もっとたくさんあります。
そして、問題の内容も多様です。計算問題、グラフや図の読み取り問題、実験問題、考察問題、論述問題、作図問題などなど、いくつもの要素があります。
おそらく、ここなのでしょう。“1つの単元だけでも、いろんな問題の出方に手を伸ばす必要があること”こそが、多くの高校生が高校生物を難しく感じる理由だと、管理人は思っています。教科書に書いてある生命現象の理解が浅い場合、特にあちこちの問題の出方に挑むことは、なかなか難しいことだと思います。
もちろん、問題には出方そのものが難しいものもあります。考察問題を解けるようになるためにはある程度の慣れを経験して考察力を身に着ける必要がありますし、論述問題も同様です。
ちなみに、これら多様な問題を苦手とする高校生が多いためか、以下のようなジャンル特化型の問題集もあります。
だいぶ高校生物が難しい理由がわかってきたと思いますが、加えて1つ補足します。
入試では、教科書外の内容や最新の生物学の知見も登場する
高校生物の入試問題では、教科書外の内容や、最新の生物学の知見が登場します。「そんなまさか…。」と思うかもしれませんが、これは高校生物では普通のことです。例えですが、早稲田大学の2019年入試では、2017年ノーベル生理学・医学賞「概日リズムを制御する分子機構の発見」が題材とされていました。もちろん、日本人(山中伸弥氏)がノーベル賞を受賞したことで有名なiPS細胞は、すっかりお馴染みの入試問題になっています。
教科書に書いてないことを問題にするので、知識問題として登場することはほぼありません。考察問題として登場することが多いです。こういう問題は良問の傾向がある一方で、基礎力と応用力を必要とするため、難易度は非常に高いです。学生にとって初見になるので難しいのは言うまでもありません。
こんなかんじで、教科書にないことが普通に入試問題に登場することが、高校生物が難しいとする一番の理由だと思います。
共通テスト高校生物では、ほとんどが高校教科書以上の考察問題が多く登場するようになってきています。
だいぶ高校生物の難しさをわかっていただけたと思います。では、高校生物の日頃の勉強はどのようにすべきなのでしょうか?
どのように高校生物を攻略すればよいか?
まずは手持ちの一冊の問題集を極める+不足分は補足する
管理人のオススメの高校生物勉強法は、まずは手持ちの学校専売問題集を極めることです。学校専売問題集とは、先に挙げたリードα、セミナー、センサーなどが該当します。管理人の塾講師時代に見てきた生徒には、一冊を極めるだけで偏差値60まで伸びた高校生が何人かいました。たった一冊でよいのかと不安かもしれませんが、上記3冊はなかなかの難易度があるので、期待値としては65まで望めるとも管理人は思っています。
一応、勉強方法の記事もまとめているので、以下に貼っておきます。
ただし、問題集にはやや偏りがあったり不足分があったりするので、その分を補って勉強することも重要です。おそらく高校生自身では、その問題集の問題の不足分がわからないでしょう。なので、高校生物をプロとする先生に助けを求めると、より学習に効果的になります。
優秀な先生を探し、助けてもらう
優秀な先生を探すことは大事ですが、実際高校生物の優秀な先生がどれくらいの割合でいるのかは、管理人もわかりません。
しかし、高校生物をプロとする先生には、次のような特徴があると、管理人は思っています。
※高校生物をプロとする先生の特徴(管理人の主観)
- 毎年、『全国大学入試問題正解生物』を解いて、入試傾向を分析している。
- 入試問題集であるPCソフト『Xam(イグザム)』を利用している。
- 参考書、問題集、専門書をたくさん持ち、よく読んでいる。
- センター試験や二次試験の問題を、受験生の半分の時間で解き、完答である。
- 問題集の不足分を見極め、プリントで渡してくれる。
これくらいの特徴があると、レベルを上中下に分類するなら“上”に該当すると思います。管理人の最盛期も、上記5つが該当していました。
そして、このような先生には、次のような要望をするとよいと思います。
※先生への要望例
- 解説を読んでもわからなかったので、教えてほしいです。
- この単元の何が大事なのかわからないので、教えてほしいです。
- 問題集の不足分の問題プリントが欲しいです。
- 特定の分野が苦手なので、その分野を包括できる演習プリントが欲しいです。
- 模試が近いので、演習材料が欲しいです。
- 志望する大学の問題傾向を教えてほしいです。
「こんなこと言ってもいいのか…?」と思うくらいの無茶な要望かもしれませんが、真剣にあなたの成長を考えている先生であれば、これくらいはやってくれるのではないでしょうか。もちろん、先生は非常に忙しいと思うので、時と場合を考慮して要望することもマナーかもしれません。
他の教科と同じく、時間をかけてコツコツ取り組む
最後の助言になりますが、高校生物の成績を伸ばすことにもやはり時間を要します。なので、日ごろからコツコツと高校生物に取り組むことが大事です。
どれくらいの時間が必要なのかというと、管理人の主観では最低1年間は継続して勉強してほしいです。高校3年生夏からの半年では、少し時間が足りないと思います。最後一カ月だけ勉強するというのは、全くオススメできません。
まだ焦らないでいい時期から、時間をかけてじっくり勉強することが望ましいです。
更新予定:共通テストでは初見力が必要
記事更新内容。
(準備中)
まとめ&おわりに
“高校生物が難しい”ことについて、データと管理人の主観をもとに語らせていただきました。ここまでのまとめをしておきます。
- センター試験の平均点を高校化学・高校物理と比べると、高校生物だけが特別に悪いとは言えない。
- 教科書だけ読んでも、いまいちどこが大事なのか自力ではわからない。
- 高校生物の問題の出方は多様であり、かつ教科書外や最新の知見からも出題され、多くの学生はそこに難しさを感じると思われる。
- 対策としては、まずは一冊の良い問題集に取り組み、適宜先生の力を借りながら勉強を進める。
最後に、管理人からのメッセージを送ります。
高校生物は難しいです。取り組まなければならない課題が多く、理解することも難しいです。しかし、そんな困難を乗り越えて高得点を取っていく学生も多くいます。自分の目標を定め、限られた時間の中での学習に計画を立て、日々邁進していってください。臆せず進めば、きっとよい結果が出ると思います。画面越しに、あなたの受験がうまくいくことを応援しています。
以上でこの記事は終わりです。読んでいただいてありがとうございました。質問や不明な点がある場合は、以下のコメント欄をご利用ください。
私の学校には恐らくですが「優秀な生物の教師」がいません。ですのでプロの方に御教授願いたいのですが、私はリードαを使っています。この参考書の不足を補うような参考書を教えていただきたいです。
K 様
コメントありがとうございます。
目標偏差値や志望大学などの情報を知りたいので、コメント欄ではなくメールでのやりとりとさせて頂きたいと思います。
いくつか質問させていただき、そこから情報を提供させて頂きます。
管理人シカマルより