高校生物の光合成で登場する“見かけの光合成速度のグラフと物質量計算の問題”を練習してみましょう。
追記:高校生物基礎版も作成しました、こちらの記事では物質量計算の要素を消しています。生物基礎の方で調べた方は、こちらの記事をどうぞ!
演習問題
まずは問題です。下のスライドが光合成速度の計算問題のスライドになります。この問題の標準解答時間は20分です。それ以上の時間が過ぎた場合は、下の解答と解説をみましょう。では、問題を解いてみましょう。
解答
問1.植物B
問2.植物A→光補償点:5000ルクス、光飽和点:20000ルクス
植物B→光補償点:2500ルクス、光飽和点:5000ルクス
問3.2500ルクスから5000ルクスの間(or 2500ルクス~5000ルクス)
問4.0ルクスから5000ルクスの間(or 0ルクス~5000ルクス)
問5.33mg
問6.98mg
解説
問1.陽生植物か陰生植物か答えるだけ!
比較的暗い場所でも生育できる植物は、植物Aと植物Bのどちらか。
この問題は知識問題で、“比較的暗い場所でも生育できる植物”のことを陰生植物と解釈する必要があります。陰生植物のグラフとして適当なものは植物Bだと判断することも、生物基礎の教科書などに載っている陽生植物と陰生植物のグラフの図を覚えているかという知識によるものです。この手の問題はぱっと見て即答してもよいものです。
- 陽生植物:光補償点と光飽和点が高い植物のこと。
- 陰生植物:光補償点と光飽和点が低い植物のこと。
問2.グラフの読み取りができるかどうかが鍵!
植物Aと植物Bの光補償点と光飽和点の光の強さを答えなさい。
この問題はグラフの読み取り問題です。光補償点は、光合成速度と呼吸速度が等しくなる光の強さのことで、見かけの光合成速度の値が0のときの光の強さになります。光飽和点は、光合成速度が変化しなくなるときの光の強さで、見かけの光合成速度のグラフが横ばいになるときの光の強さになります。この2つの読み取り方を、植物Aと植物Bのそれぞれのときに行うことになります。スライドで示すと、下のようなかたちになります。
問3.グラフを読み取った上で適切に判断する問題
片方の植物は生育するが、もう片方の植物が生育しない光の強さは、光の強さがどの範囲のときか、答えなさい。
この問題はグラフの読み取り問題です。見かけの光合成速度のグラフにおいて植物が生育する光の強さは、光補償点より大きい値となります。“光合成速度”が“呼吸速度”を上回ることが必須条件なのです。よって、問題文を解釈すると、“片方の植物では光補償点以上で、もう片方の植物では光補償点以下”の光の強さを読み取る、というようになります。問2で植物Aと植物Bの光補償点の値を求めているので、それをそのまま使えばよいでしょう。植物Bの方が光補償点の光の強さが小さいので、回答は“植物Bの光補償点の光の強さから植物Aの光補償点の光の強さの間”というようになります。
見かけの光合成速度のグラフにおいて植物が生育する光の強さは、光補償点よりも大きい値である。その理由は、光合成速度が呼吸速度を上回らないと生育しないため。
問4.見かけの光合成速度のことではないことに注意!
A植物とB植物の光合成速度が同じになるのは、光の強さがどの範囲のときか、答えなさい。
この問題はグラフの読み取り問題です。見かけの光合成速度のグラフでは、以下の3つの値を読み取ることができます。
- 見かけの光合成速度の値
- 光合成速度の値(真の光合成速度の値ともいう)
- 呼吸速度の値
グラフでそれぞれの値をどのように読み取るかというと、以下のスライドのようになります。
言葉で説明すると、
- 見かけの光合成速度の値は、グラフの値そのまま。
- 光合成速度の値は、その光の強さのグラフの値と光の強さが0のときのグラフの値の差。
- 呼吸速度の値は、光の強さが0のときのグラフの値で、光の強さに関わらず常に一定(一定条件下において)。
というような感じです。
グラフの読み取り方を説明したので、解説に戻ります。
植物Aと植物Bの見かけの光合成速度のグラフの傾きは同じなので、0ルクスから光の強さが強くなっていくとき、両方の光合成速度は同じ値となります。しかし、光の強さが5000ルクスに達すると植物Bの光合成速度は一定となりそれ以上大きくならないので、5000ルクスを境に植物Aの光合成速度の方が大きくなります。よって解答は、0ルクスから5000ルクスの間となります。
問5.反応式と物質量を扱う“化学”のような問題!
A植物の100cm2の葉を2枚用意し、片方には6時間の間10000ルクスの光を照射し、片方には6時間の間20000ルクスの光を照射した。このときの、光の強さによる光合成量の違いは、グルコース量として何mgになるか、答えなさい。
この問題は計算問題です。10000ルクス6時間照射のときと20000ルクス6時間照射のときの(真の)光合成量の違いを、問題文に従ってグルコース量として求めることを行います。方針は、①それぞれのCO2吸収量の差を求めて、②それをグルコース量に変換するというかたちになります。
まず方針①に従って、両方でのCO2吸収量の差を求めてみましょう。両者でのCO2吸収量は、下のスライドのようになります。
式の意味がどのようになっているかというと、問題中のグラフの縦軸の値の単位を使ってCO2吸収量を求めています。CO2吸収速度の単位は、“mg/100cm2・1時間”となっているので、その光の強さの光合成速度の値に葉面積と時間をかければ、CO2吸収量(mg)となります。10000ルクス6時間照射のときのCO2吸収量は48mg、20000ルクス6時間照射のときのCO2吸収量は96mgとなるので、その差の48mg(96mgー48mgの値)が、CO2吸収量の差となります。
次に方針②にしたがって、CO2吸収量をグルコース量に変換しましょう。ここでは、光合成の化学反応式を用いて、質量計算を行います。植物が吸収したCO2は光合成によってグルコース合成に用いられることが理由です。
光合成の化学反応式のおさらいをしておきましょう。
光合成の化学反応式
6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6O2 + 6H2O
この化学反応式を用いて、CO2吸収量をグルコース量に変換しましょう。下のスライドのようにして計算します。
上のスライドのように、CO2吸収量をグルコース量に変換するときは、化学基礎で学習した物質量計算の方法を使います。その結果求まった計算結果の33mgが解答になります。注意しないといけないのは、この問題のリード文では小数点以下1桁を四捨五入しなさいと書いてあるので、それに従った値を答えとします。
長々と説明しましたが、計算式をまとめると下のようになります。
(16×6ー8×8)÷44÷6×180≒33mg
問6.物質量計算だが問題の設定に注意!
A植物の葉200cm2に14時間15000ルクスの光を照射しその後10時間暗黒状態に保った。この24時間で葉の中の有機物量は何mg増減するか、答えなさい。ただし、光合成産物も呼吸基質もグルコースとする。
この問題は計算問題です。ここまでの問題で使った知識や方法をすべて用いて計算結果を求めることになります。
その前に設問で有機物量の増減を求めよと書いてあることについて解説します。問5では光合成量を取り扱っていたので、用いる値は(真の)光合成速度の値だけで済みました。しかし、“有機物量の変化”を考える場合は、光合成速度だけでなく呼吸速度も考慮する必要があります。ここでの有機物は問題文に従ってグルコースと考えますが、光合成ではグルコースが合成され、呼吸ではグルコースが消費されます。よって、24時間の間で合成されたグルコース量から消費されたグルコース量を引いた値が解答となるわけです。
設問によっては、光合成速度だけでなく呼吸速度も考慮しなければならないときがある。問題文をよく読んで、判断できるようになりましょう。
では、計算式はどのようになるのか、下のスライドで確認しましょう。
ポイントを確認しましょう。
- 問6の問題文では葉面積が200cm2となっているので、CO2吸収速度に200をかける必要がある。
- 15000ルクスのときの光合成速度は12なので、14時間照射したときのCO2量は(14×12)となる。また、24時間呼吸で消費したCO2量は、時間に呼吸速度の(ー4)をかけて(ー24×4)となる。
- 最後に、24時間で変化したCO2量をグルコース量に変換する。
以上の手順を踏むと、解答は98mgとなります。
総括
このテーマの問題は、一度解いたことがあるだけで問題を解くスピードと正確さが確実に上がります。知識・グラフの読み取り・計算と問われる能力は多いですが、定期テストや入試問題でよくみかけるテーマなので、ぜひ練習してみましょう。
おわりに
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