この記事は、生物基礎の第2章“遺伝子とその働き”のまとめ語句埋め問題(10,000字相当)です。“遺伝子とその働き”を学び終わったあとの復習に使ってください。なお、難易度をやや高くしている部分もあります。
なお、黄色いマーカーの部分を範囲選択すると、答えを反転して見ることができます。
かなりボリュームがあるので、①時間があるときに演習する、または②ブックマークしておいて隙間時間に勉強することをオススメします。
それぞれの単元の末尾には、より詳しく解説している内部リンクを紹介しています。必要な場合はそちらも参考にしてください。
※まとめとしての品質向上のため、ご感想をコメントで頂けたら幸いです。
遺伝子の本体=DNA
『遺伝』の古典的意味と現在の意味
「遺伝」の意味は、古典的には、親の形質が子やそれ以降の世代に現れる現象のことを呼んでいた。この形質を決定づける因子として、[遺伝子]の存在が想定された。現在の遺伝の意味は、遺伝子の本体であるDNAが親から子に伝わる現象のことを指し、遺伝子の本体は[DNA]であることがわかっている。
DNAの構造
遺伝子の本体は、[DNA]である。踏み込んで遺伝子を定義すると、DNAのなかの特定の[塩基配列]のことを指す。塩基配列とは、塩基の並ぶ順番のことである。
DNAの構造では、[ヌクレオチド]を基本単位としている。ヌクレオチドは、リン酸、糖、塩基からなる。DNAの場合、糖は[デオキシリボース]である。また、塩基は4種類あり、[アデニン(A)]、[チミン(T)]、[グアニン(G)]、[シトシン(C)]となっている。
ヌクレオチドが結合することによってできる鎖状の構造物のことを[ヌクレオチド鎖]と呼ぶ。ヌクレオチド鎖では、ヌクレオチドが[糖]と[リン酸]で結合している。
DNAの構造は、研究者である[ワトソン]と[クリック]によって、[二重らせん構造]をしていることが判明した(1953年)。二重らせん構造は、2本のヌクレオチド鎖が弱く結合することによってできている。ヌクレオチド鎖の結合の実際は、塩基と塩基の間の弱い結合である。アデニンにはチミンが結合し、グアニンにはシトシンが結合する。このような塩基の対の関係のことを、[塩基対]と呼ぶ。相補的塩基対により、1本のDNAあるいはDNA二重鎖においては、アデニンとチミン、グアニンとシトシンの量がほぼ同じである。この量的関係は、発見者にちなんで[シャルガフの規則]と呼ばれている。
シャルガフの規則の入試問題
シャルガフの規則を使う問題のパターンは、以下のとおりである。
- A=T、G=Cをそのまま使って、塩基の割合を答える。
- A、T、G、Cについて、成立する式を選ぶ。
- 提示された塩基の割合の情報を処理して、一方のヌクレオチド鎖における塩基の割合を答える。
※“シャルガフの規則”と“塩基の相補性”については、下の内部リンクで演習してください。
遺伝子の本体がDNAであることの証明
グリフィスの実験
DNAを発見した研究者は、[ミーシャー]である(1869年)。発見当時は、遺伝子の本体という見解はなく、リンの貯蔵物質ではないかと推定されていた。しかし、1900年代半ばの3つの研究により、DNAが遺伝子の本体であることがわかった。
グリフィスの実験は、次のようなものである。
- 肺炎双球菌のS型菌をネズミに注射すると、ネズミは肺炎を発病して死亡した。
- 肺炎双球菌のR型菌をネズミに注射しても、ネズミには害がない。
- S型菌を加熱処理したものを注射しても、ネズミには害がない。
- これらがわかったうえで、R型菌と加熱処理したS型菌を混ぜてネズミに注射したところ、ネズミの血液中に[S型菌]が現れ、ネズミは肺炎を起こして死亡した。
この実験での、R型菌が形質を変えてS型菌に変化するというような、形質が変化する現象のことを[形質転換]という。R型菌がS型菌に形質転換した理由として、R型菌は加熱殺菌したS型菌に含まれているなんらかの物質を取り込むことによってS型菌に変化すると想起された。
エイブリーの実験
グリフィスの実験により、遺伝子(形質を変える因子)は、死んだS型菌に含まれることが示唆された。その結果を踏まえ、エイブリーは、S型菌の破砕液にいくつかの処理をしてからR型菌と培養する実験を行った。
- 肺炎双球菌S型菌を破砕して得たS型菌の細胞成分を、無処理の状態で、R型菌が入った培養液に添加して培養すると、形質転換が起きて生きたS型菌が現れた。
- 肺炎双球菌S型菌を破砕して得たS型菌の細胞成分を、DNA分解酵素で処理して、R型菌が入った培養液に添加して培養すると、形質転換は起こらず生きたS型菌は現れなかった。
- 肺炎双球菌S型菌を破砕して得たS型菌の細胞成分を、タンパク質分解酵素で処理して、R型菌が入った培養液に添加して培養すると、形質転換が起きて生きたS型菌が現れた。
この実験群より、S型菌のDNAが存在しないと形質転換は起こらないことがわかった。よって、エイブリーは、形質転換はDNAによって生じると結論付けた。
ハーシーとチェイスの実験
遺伝子の本体は、タンパク質かDNAのどちらかであるという論争が続いていた。そこで、ハーシーとチェイスは、ウイルスの一種であるバクテリオファージの成分がタンパク質とDNAしかないことを利用して、遺伝子の本体がDNAであることを証明した。その手順は、以下のとおりである。
- 標識:実験Aではファージのタンパク質を標識した。実験BではファージのDNAを標識した。標識をすると、その物質の在りかがわかる。
- 感染:標識したファージを、大腸菌の表面に吸着(感染)させて、少しの時間静置した。
- 撹拌:ブレンダーを用いて、撹拌操作を行った。撹拌を行うと、吸着したファージは大腸菌から離れる。
- 遠心:遠心操作を行って、上澄み区分と大腸菌の沈殿区分に分けた。
- その後の操作:再び撹拌と遠心を行い、上澄み区分と沈殿区分に分けた。
結果と結論は、次のようなものである。
実験A | ④の操作後、標識したタンパク質は、上澄みから検出された。
→標識したタンパク質は、大腸菌には取り込まれなかった。 |
実験B | ④の操作後、標識したDNAは大腸菌の沈殿から検出された。
→標識したDNAは、大腸菌に取り込まれた。 ⑤の操作後、標識したDNAは上澄みから検出された。沈殿は大腸菌の遺骸だった。 →大腸菌内に入ったDNAをもとに、次世代のファージがつくられた。 |
これらの結果より、遺伝する物質は[DNA]であると結論づけた。
※ファージの挙動について
- ファージは、大腸菌の表面に吸着すると、大腸菌の細胞壁と細胞膜に穴をあけて、ファージのDNAを大腸菌の内部に挿入する。実験において、大腸菌の沈殿からDNAが検出されたのは、このしくみのためである。
- ファージのDNAは、大腸菌の体内で複製する。複製の際は、大腸菌体内にある物質を用いる。
- 複製されて増えたDNAをもとにして、次世代のファージが多数生じる。
- 生じた子ファージは、大腸菌の細胞膜と細胞壁を溶かして、大腸菌の体外に出る。実験において、静置・撹拌・遠心のあとに上澄みからDNAが検出されたのは、このしくみのためである。
この単元の詳細
下の内部リンクを参考にしてください。
染色体と細胞分裂、ゲノム
染色体とDNA
染色体とは、真核細胞では細胞小器官の[核]の中に見られる構造体である。染色体の成分は、核酸の[DNA]とタンパク質の一種の[ヒストン]である。DNAはヒストンに絡みついて[ヌクレオソーム]という構造になる。ヌクレオソームが規則的に絡まることによって、[クロマチン繊維]になる。クロマチン繊維が染色体の通常の状態である。
細胞分裂では、クロマチン繊維がさらに規則的に密におりたたまれる。このことを[凝縮]するという。
ヒトの染色体の数は、[46]本ある。22対44本については、同じ形で一組となっており、対をなす染色体のことを[相同染色体]という。相同染色体には基本的に同じ遺伝子が含まれるが、塩基配列は異なる。
細胞分裂における染色体の分配
体細胞分裂とは、1つの体細胞(母細胞)が2つの体細胞(娘細胞)に分裂することである。染色体は2倍に[複製]され、2つの娘細胞に分配される。
減数分裂では、染色体の数が体細胞の半分になった生殖細胞がつくられる。ヒトの生殖細胞は、精子と卵である。精子と卵が合体することを[受精]という。受精によってできた細胞を[受精卵]という。
『ゲノム』の意味
ゲノムの意味は古典遺伝学的意味と分子生物学的意味の2つが存在し、どちらも入試で見受けられる。
- 古典的には、“生殖細胞のもつ染色体セット”という意味を持つ。生殖細胞は、体細胞の半分の染色体をもつ。ヒトの場合、相同染色体を1本ずつ計22本に加えて、性染色体のXかYのどちらかをもつ。合計の染色体数23本が、古典的な意味でのヒトゲノムである。なお、「生物をその生物たらしめるための最小の染色体数」と改まった定義が使われる場合は、相同染色体を1本ずつ計22本に加えて、性染色体のXとYの両方を含む、合計24本のことを指す。ゲノム1セットのことを、1ゲノムと呼ぶことが多い。
- 現在よく使う『ゲノム』の意味は、“1ゲノム分の塩基配列”である。DNAにおいて情報となるものは、塩基の並び方、つまり塩基配列のことである。DNAの構造がわかってからは、1ゲノム分の塩基配列すべてのことをゲノムと指すようになった。ヒトに関して上の図でいうと、相同染色体を1本ずつ計22本に加えて、性染色体のXとYも加えた合計24本分の染色体の塩基配列のこととなる。なお、ヒトゲノムの塩基配列の長さ(1ゲノム分)は、[30億]塩基対となる。発展的に扱う場合は、ミトコンドリアや葉緑体に含まれるDNAの塩基配列も、その生物のゲノムに含まれる。ヒトゲノムの解析は、[ヒトゲノムプロジェクト]という世界共同での研究によって2003年に完了した。
倍数体
古典的な意味での1ゲノムにおける染色体数のことを、基本数と呼ぶ。ヒトにおける基本数は23本となる。基本数が1つ分あるときは、nと表す。基本数が2つ分あるときは、2nと表す。つまり、古典的な意味でのゲノムにおいて、1ゲノムのことをnと表し、2ゲノムのことを2nと表す。ヒトのような2nの生物のことを2倍体と呼ぶ。また、2倍体生物の生殖細胞のことは、半数体と呼ぶ。
DNAの長さに関する計算問題
基本的な考え
DNAの構造を踏まえると、以下のようないくつかの事柄を解釈することができる。
- DNA二重鎖において、10塩基対につき、長さは3.4nmである。
- DNA一本鎖において、10塩基につき、長さは3.4nmである。
なお、「10塩基対につき3.4nmの長さ」であることは覚えなくてよい。入試問題において必ず設問中に記載がある。
塩基対の数と長さの関係を計算するときは、以下のような比を用いるとよい。
10塩基対:3.4nm=塩基対の数(~塩基対):長さ(nm)
設問で設定されている目的のDNAあるいはヌクレオチド鎖の塩基対数(または塩基数)か、長さを代入すれば、答えとなる数値を導くことができる。
DNAの抽出実験
準備するもの
材料:冷凍したブロッコリーの蕾の部分30g
器具:乳鉢、乳棒、茶こし、ビーカー、ガラス棒、割りばし、シャーレ、ろ紙、ドライヤー
薬品:抽出用の溶液(塩化ナトリウム4.0gを水50mLに溶かし、中性洗剤を2滴加えたもの)、氷冷したエタノール、酢酸カーミン液、熱湯
実験の手順
手順 | 操作 | 操作の意味 |
① |
抽出用の溶液を作成する。 | ★1~2moL/LのNaCl水溶液が、DNAをよく溶かす。溶かすとは、ヒストンから分離させることである。
★中性洗剤は、細胞膜や核膜を破壊する。 |
② |
冷凍したブロッコリーを乳鉢に入れて、乳棒で約5分の間粉砕する。粉砕の程度は、蕾が確認できないくらいである。 | ★常温ではDNA分解酵素がはたらくので、ブロッコリーを冷凍しておくとよい。また、手順⑥までの操作を15分以内に行う。 |
③ | 乳鉢に抽出液を加えて、乳棒で静かにかき混ぜる。 | ★静かにかき混ぜないと、DNAが切断されてしまう。 |
④ | 乳鉢のなかの粉砕液を、茶こしでろ過しながらビーカーに移す。 | ★ろ液の中にDNAが含まれているので、他の固体の物質をろ過で取り除く。 |
⑤ |
ガラス棒を使って、④のろ液にろ液と同量程度の冷エタノールを静かに注ぐ。 | ★DNAは冷えたエタノールに難溶である。
★エタノールは水よりも比重が軽いため、静かに注ぐと水の層の上にエタノールの層ができる。 |
⑥ |
ろ液の層とエタノールの層の境界に析出したDNAを割りばしで静かにからめとり、シャーレ上のろ紙の上にのせる。 | |
⑦ |
ろ紙をドライヤーで乾かしたあと、酢酸カーミン液をDNAに滴下する。約3分の間染色したのちに、ろ紙に直接かからないように熱湯を注ぎ、ろ紙を静かにゆらして脱色する。 | ★酢酸カーミン液で染まれば、DNAであることを示すことができる。
★DNAに直接熱湯をかけると、DNAの構造が壊れてしまう。 |
より詳細を復習したい方へ
この単元をまとめた記事をここに貼っておきます。
細胞周期と体細胞分裂
細胞周期
真核生物における細胞分裂とDNA複製に見られる周期性のことを、[細胞周期]とよぶ。細胞周期は、おおまかには細胞分裂の準備期間である[間期]と細胞分裂の期間である[分裂期(M期)]に分けられ、さらに以下の表のように分けられる。
間期 | [DNA合成準備期(G1期)] | ★DNA複製の準備期間。 |
[DNA合成期(S期)] | ★DNAの複製期間。 | |
[分裂準備期(G2期)] | ★細胞分裂の準備期間。 | |
分裂期 (M期) |
[前期]
[中期] [後期] [終期] |
★分裂期が終わると、1個だった細胞は2個になる。
※なお細胞分裂には、体細胞分裂と減数分裂がある。 |
このように、細胞分裂では、まずDNAの複製を行ってから、細胞の分裂を行う。
体細胞分裂の詳細
(準備中)
分裂期において、前期から終期に入るまでの期間では染色体の分配が起こる。この染色体の分配のことを[核分裂]という。核分裂が終わったのち、細胞質の分裂が起こり、そのことを[細胞質分裂]という。
体細胞分裂におけるDNA量の変化
体細胞分裂におけるDNA量の変化は、何に注目するかで異なってくる。
①細胞あたりのDNA量の変化
体細胞分裂を行うにあたって、母細胞はS期にDNAの複製を行う。よって、この期間が終わるまでにDNA量は2倍になる。終期の終わりに細胞質分裂が完了し娘細胞2個が生じるので、このときに細胞あたりのDNA量はもとの相対値に戻る。
②染色体あたりのDNA量の変化
S期にDNA量が2倍になることは、①と同じである。後期の始まりに、姉妹染色体は分かれるので、このときに染色体あたりのDNA量はもとの相対値に戻る。
※核あたりのDNA量の変化、という問題が出ることもある。
細胞周期観察実験の方法
準備するもの
材料:タマネギの根
器具:はさみ、ビーカー、スライドガラス、カバーガラス、柄付き針、ろ紙、光学顕微鏡
薬品:酢酸アルコール(無水エタノール:氷酢酸=3:1)、塩酸、酢酸カーミン液
実験の手順
手順 | 操作 | 操作の意味 |
① |
根を先端から約1cmのところで切り取り、これを酢酸(可能なら酢酸アルコール)に5~10分間浸す。 | ★酢酸に浸す処理を[固定]という。固定は、生きているときに近い状態で細胞のはたらきを止めるための処理である。 |
② |
固定した根端を、約80℃の塩酸に10~20秒間浸す。 | ★塩酸に浸す処理を[解離]という。解離は、細胞間の結合を弱めるための処理である。
(細胞と細胞の結合に関与するタンパク質を変性させる処理) |
③ | 解離処理をした根端をスライドガラスにのせ、酢酸カーミン液を滴下し10分程度待つ。 | ★酢酸カーミン液で染色体を染色する。
|
④ |
染色処理をした根端にカバーガラスをかける。根端の上を柄付き針で軽くたたき、その後プレパラートをろ紙にはさみ、ろ紙の上から親指で垂直に強く押しつぶす。 | ★押しつぶしは、重なった細胞を広げ観察しやすくするために行う。 |
⑤ |
顕微鏡にプレパラートをセットし、低倍率(15×4程度)でM期の細胞を探す。M期の細胞を見つけたら、その視野に見られる間期とM期の各時期の細胞数を記録する。 | ★M期の細胞でのみ染色体を観察できる。
★視野内のすべての細胞あたりのM期の細胞数を計算することで、細胞周期におけるM期の時間の割合がわかる。➡入試問題 |
細胞周期に関する計算問題の解き方
細胞周期の計算問題では、下のような割合計算式を用いることが多い。
その時期の時間=細胞周期の時間×(その時期の細胞数/合計の細胞数)
発展:細胞周期を制御するしくみ
細胞周期には“チェックポイント”という制御機構がある。参考までにWikipediaのリンクを貼っておく。
タンパク質
タンパク質のはたらき
生物の生命反応のほとんどは、タンパク質が担っている。はたらきの代表例を表にまとめる。これらのタンパク質は、適切な組織・器官において、DNAの遺伝情報が発現することでつくられている。
タンパク質の種類 | タンパク質の名前 |
酵素 | 1章で出てきた酵素など |
生体の構造をつくるタンパク質 | 眼の水晶体:[クリスタリン]
皮膚:[ケラチン]、[メラニン] |
運動にはたらくタンパク質 | 筋肉:[ミオシン]、[アクチン] |
運搬にはたらくタンパク質 | 酸素の運搬:[ヘモグロビン] |
ホルモン | 3章で扱うもののうち、ペプチドホルモン
血糖値を下げるホルモン:[インスリン] |
抗体(免疫) | [免疫グロブリン(抗体)] |
血液凝固 | [フィブリン] |
タンパク質の構造
タンパク質とは、[アミノ酸]が鎖状につながった分子が立体構造をとったものである。アミノ酸は、[20]種類存在している。タンパク質のアミノ酸の配列は、タンパク質に固有であり、タンパク質の性質を決める要素である。
転写と翻訳
RNAの種類と構造
RNAとは、核酸の一種であり、同じく核酸の一種であるDNAの遺伝情報をもとにして合成される物質である。RNAとDNAの違いは、以下のようにまとめることができる。
核酸 | DNA | RNA |
日本語表記 | [デオキシリボ核酸] | [リボ核酸] |
構成単位 | ヌクレオチド | ヌクレオチド |
塩基 | A、T、G、C | A、U、G、C
(U:[ウラシル]) |
糖 | [デオキシリボース] | [リボース] |
鎖の状態 | 二本鎖 | [一本鎖] |
種類 |
(空欄) | mRNA([伝令RNA])
tRNA([運搬RNA]) rRNA([リボソームRNA]) |
★RNAだけがもつ塩基ウラシルは、[アデニン]と相補性をもつ。
セントラルドグマ
[セントラルドグマ]とは、下の表のような遺伝情報の流れに関する原則のことを指す。
複製 | DNAが複製されることを指す。 |
[転写] | DNAの遺伝情報(塩基配列)にしたがって、RNAが合成されることを指す。 |
[翻訳] | RNAの情報(塩基配列)にしたがって、タンパク質が合成されることを指す。 |
転写と翻訳のしくみ
【転写】
DNA内の塩基対の結合がほどけて、部分的に1本鎖DNAになる。片方の1本鎖DNAの塩基に、RNAのヌクレオチドの塩基が相補的に結合していき、RNAができる。
【翻訳】
転写によりできたmRNAの塩基3つにつき、1個のアミノ酸が指定される。tRNAによって指定されたアミノ酸がRNAに運びこまれ、隣り合うアミノ酸が結合することで鎖状になる。鎖状になったアミノ酸は、いくつかの過程を経てタンパク質になる。
遺伝情報の発現
遺伝情報の発現
“遺伝情報の発現”とは、遺伝子の塩基配列がもとでタンパク質が合成されることである。細胞によって、ゲノムのなかのどの遺伝子が発現するかは異なる。
分化した細胞のゲノム
[分化]とは、細胞が特定のかたち・機能をもつことを指す。分化した細胞でも、受精卵と同じようにすべてのゲノムをもつことは、以下のような実験にて証明された。
1960年代、研究者である[ガードン]は、アフリカツメガエルの褐色個体の未受精卵に[紫外線]を照射して核の働きを失わせ,この卵に褐色色素をもたない白色個体の体細胞の核を移植した。その結果,この卵から生じたすべてのカエルの体色は,白色になった。
1996年にイギリスで、異なる種類のヒツジを用いて核移植実験が行われた。まず,スコティッシュブラックフェイスと呼ばれる種のヒツジから未受精卵を取り出して核を除き,フィンドーセットと呼ばれる種類のヒツジの体細胞の核を移植した。次に,このようにして作成した卵をスコティッシュブラックフェイスの子宮に戻した。その結果,核を提供したフィンドーセットの形質と全く同じ形質をもつヒツジが誕生した。
だ腺染色体
キイロショウジョウバエやユスリカの幼虫のだ腺細胞には、[だ線染色体]という巨大な染色体が見られる。だ腺染色体は、間期のだ腺細胞でも光学顕微鏡で観察できる。だ腺染色体を染色液で染めると、横縞が見られる。この横縞は[遺伝子]の位置に対応するものと考えられている。また、だ腺染色体には、[パフ]と呼ばれるふくらんだ部位がある。パフでは転写が盛んに起きていてmRNAが活発に合成されている。[メチルグリーン・ピロニン]溶液を用いると、DNAは[青緑]色に、RNAは[赤桃]色に染まる。つまり、パフは[赤桃]色に染まる。
特定の染色体を、異なる発生段階で観察すると、パフの位置が異なっている。特定の発生段階になる前にはたらく遺伝子の発現が、その発生段階になるために必須である。
ユスリカのだ線染色体の観察方法
実験手順は、以下の通りである。
- ユスリカの幼虫をスライドガラスに取る。ピンセットなどで頭部を引っ張って切り取ると、頭部につながって一対のだ腺と消化管が出てくる。
- だ腺以外のものをすべて取り除いたのち、だ腺に染色液を滴下し、染色する。
- カバーガラスをかけ、ろ紙ではさむ。親指で強く押してだ腺細胞を押しつぶすとともに、余分な染色液を吸い取り、プレパラートを作成する。
- プレパラートを光学顕微鏡で観察する。
総括
第1章“生物の特徴”に比べると暗記する量は少し減りますが、代わりに理解を求められる小単元が増えます。また、定期テストや入試問題では、実験問題や計算問題などがこの単元から登場します。この記事でさらりと重要単語を確認する一方で、各所で紹介している演習問題も一緒に見て学習するとよいでしょう。典型問題でも文系の方にとっては難しく差が開きやすいので、必ず演習問題は解けるようになってもらいたいところです。
生物基礎の他の単元のまとめ
おわりに
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