第2章「遺伝子とその働き」

「高校生物基礎」遺伝子の本体=DNAの実験解説(グリフィス・エイブリー・ハーシーとチェイス)

この記事は、高校生物基礎の第2章『遺伝子とその働き』で登場する“遺伝子の本体がDNAであることを証明した実験群(グリフィスの実験、エイブリー(アベリー)の実験、ハーシーとチェイスの実験)”の解説記事です。

※この記事は下の動画を文字起こししたものです。なお、動画制作者=管理人です。

遺伝子の本体=DNAの証明実験群の概要

研究に携わった人たち

スライド1:遺伝子の本体=DNAだと証明した研究者たちスライド1:遺伝子の本体=DNAだと証明した研究者たち

このスライドの写真は、遺伝子の本体がDNAだと証明した実験に関わった研究者たちになります。左から、グリフィス、アベリー、ハーシー、チェイスです。いずれもモノクロの写真になりますが、彼らの活躍は1920年代から1950年代だったので、まだカラー写真の技術がなかった頃になるのでしょう。

実験群の内容

スライド2:各研究者の実験概要スライド2:各研究者の実験概要

次のスライドでは、実験とその結論をコンパクトに紹介しています。まず、グリフィスの実験では、肺炎双球菌の形質転換を発見しました。次に、アベリーの実験では、形質転換を起こす物質がDNAだということがわかりました。最後に、ハーシーとチェイスの実験で、遺伝子の本体がDNAだとわかりました。なお、DNAが二重らせん構造をしていることがわかる前に、これらの実験は行われました。

グリフィスの実験

スライド3:グリフィスの実験スライド3:グリフィスの実験

ではさっそく、グリフィスの実験から解説していきます。グリフィスは、細菌の一種である肺炎双球菌を用いました。肺炎双球菌には2タイプあり、病原性をもつS型菌と、病原性をもたないR型菌があります。スライド3の下の図にあるように、S型菌をネズミに注射すると、ネズミは死んでしまいます。対して、R型菌を注射したときは、病原性がないために、ネズミは生きたままです。

スライド4:グリフィスの実験スライド4:グリフィスの実験

次の実験3の図を見てください。この実験では、S型菌を加熱処理したものを生きたR型菌に混ぜて、ネズミに注射しました。S型菌を加熱処理したものとは、死んだS型菌の残骸だと思ってください。その結果、ネズミのなかには死んでしまうものが現れました。これらの実験から結論を出すと、まず一つ目は、死んだS型菌の残骸が、生きたR型菌を“生きたS型菌”に変化させたということです。グリフィスは、この現象を『形質転換』と名付けました。

形質転換を発見したグリフィスでしたが、形質転換がなぜ起こるのかについてはわかりませんでした。形質転換を起こす物質がDNAであると解明したのは、次に解説するアベリーになります。

アベリーの実験

アベリーの名前は「エイブリー」でも問題ありません。

スライド5:アベリーの実験スライド5:アベリーの実験

では、アベリーの実験の解説に移ります。アベリーの実験では、対照実験が行われました。途中までの操作は同じです。まず、肺炎双球菌のS型を用意します。次に、このS型菌を破砕、つまり砕いて、S型菌の残骸を含む溶液を用意しました。これを、S型菌の細胞分画と呼ぶことにします。ここからは3つの実験群に分かれます。

  1. 1つ目は、S型菌の細胞分画に何も操作をすることなく、生きたR型菌に混ぜました。その結果、R型菌が形質転換を起こしてS型菌が現れました。
  2. 2つ目は、S型菌の細胞分画をDNA分解酵素で処理をしました。その結果は、形質転換は起こらず、R型菌のみ存在していました。
  3. 3つ目は、S型菌の細胞分画をタンパク質分解酵素で処理しました。その結果、形質転換が起こりS型菌が現れました。

以上が、アベリーが行った実験です。

スライド6:アベリーの実験の解説スライド6:アベリーの実験の解説

それでは、アベリーの実験のどこに着目すればいいのでしょうか。そのポイントは、DNA分解酵素で処理したときだけ、形質転換が起こらなかったことです。なので結論としては、形質転換を起こす物質はDNAであると言うことができます。まだ、遺伝子の本体がDNAであると言うことはできませんでした。遺伝子の本体がDNAであると証明できたのは、次に紹介するハーシーとチェイスになります。

T2ファージの増殖について解説

スライド7:T2ファージが子孫を残すしくみスライド7:T2ファージが子孫を残すしくみ

ハーシーとチェイスの実験の説明をするまえに、T2ファージが子孫を残すしくみを、先に知ってほしいと思います。

T2ファージは、ハーシーとチェイスの実験で使われたウイルスであり、その成分はタンパク質とDNAだけという単純な構造をしています。では、スライド7をなぞりながら、ファージが子孫を残すしくみを見ていきましょう。

まず、ファージは、大腸菌の表面に吸着します。すると、大腸菌の細胞壁と細胞膜に穴をあけて、大腸菌の内部にファージのDNAを挿入します。挿入されたファージのDNAは、大腸菌によって複製されて、大腸菌のなかで増えます。すると、ファージのDNAをもとに、次世代のファージができます。大腸菌のなかで増えた次世代のファージは、大腸菌の細胞膜と細胞壁を破り、大腸菌の外に出ていきます。以上が、ファージの子孫を残すしくみです。

ハーシーとチェイスの実験

スライド8:ハーシーとチェイスの実験の手順スライド8:ハーシーとチェイスの実験の手順

では、核心となるハーシーとチェイスの実験の解説に移りましょう。このスライドでは、手順を示しています。順番は、標識、感染、撹拌、遠心、検出、となっていきますが、文章だけではわかりにくいので、図で見ていきましょう。

スライド9:ハーシーとチェイスの実験スライド9:ハーシーとチェイスの実験

最初に、標識と感染について説明します。標識という操作では、ファージのタンパク質とDNAのどちらかに放射線を出す物質を組み込みます。この操作を行うと、タンパク質の放射線が出るところにはタンパク質があることがわかり、DNAの放射線を出すところにはDNAがあることがわかります。改めて言いますが、どちらかしか放射線で標識しません。このスライドの左の図ではタンパク質が標識されており、そのことを赤色で示しています。右の図ではDNAが標識されており、そのことを黄色で示しています。次の感染ですが、これは大腸菌の表面に標識したファージを吸着させることを指します。

スライド10:ハーシーとチェイスの実験スライド10:ハーシーとチェイスの実験

次のスライドは、撹拌という操作についてです。この操作では、ブレンダーという機械を使うことで大腸菌を振動させ、表面に吸着しているファージを大腸菌から離れさせます。

スライド11:ハーシーとチェイスの実験スライド11:ハーシーとチェイスの実験

さらに次のスライドに移ります。遠心という操作を行うと、大腸菌からなる沈殿分画と、液体の上澄み分画に分かれます。遠心操作後に、タンパク質を標識した方とDNAを標識をした方で、どちらの分画から放射線が出ているのか検出しました。すると、タンパク質は上澄み分画で検出され、DNAは沈殿分画から検出されました。

スライド12:ハーシーとチェイスの実験スライド12:ハーシーとチェイスの実験

DNAを標識した方の実験には、まだ続きがあります。先ほど大腸菌の沈殿分画からDNAを検出しましたが、そのあと30分ほど静かに置いておきます。さらにそのあとに、再び撹拌して遠心の操作を行います。すると今度は、沈殿ではなく上澄み分画からDNAが検出されました。ここまでが、ハーシーとチェイスの実験になります。

スライド13:ハーシーとチェイスの実験スライド13:ハーシーとチェイスの実験

だいぶごちゃつきましたので、改めて実験の過程を振り返ってみましょう。このスライドでは、先ほどいくつかのスライドで紹介した図をすべてまとめています。もう一度実験の過程を目で追ってみてください。実験の過程を理解出来たら、考えてみましょう。遺伝子の本体は、DNAとタンパク質のどちらでしょうか。また、その理由はどのように説明することができるでしょうか。ヒントは、大腸菌のなかに入ったものは何だったのか、ということです。ここで動画を止めて考えてみてもいいですし、さっぱりわからないのであればすぐ次に移りましょう。5秒ほど何も言わない時間にしておきます。

スライド14:ハーシーとチェイスの実験のまとめスライド14:ハーシーとチェイスの実験のまとめ

では、結果をまとめてみましょう。タンパク質を標識した方の実験では、タンパク質は大腸菌の沈殿区分なかからその放射線を検出することができませんでした。なので、ファージのタンパク塩津は大腸菌に取り込まれなかったと判断することができます。一方、DNAを標識した方では、一旦は大腸菌の沈殿区分から検出されたので、ファージのDNAは大腸菌のなかに入ったと判断できるでしょう。また、そのあとの処理をしたあとに、沈殿ではなく上澄みの方からDNAを検出できたことは、次世代のファージが大腸菌を破って外の液体部分、つまり上澄み分画に出たと判断することができます。

スライド15:ハーシーとチェイスの実験からわかることスライド15:ハーシーとチェイスの実験からわかること

改めて、ハーシーとチェイスの実験をまとめます。この実験からわかったことは、次世代のファージに取り込まれた物質はDNAだということでした。このことから、「遺伝子の本体はDNAである」と結論付けることができました。

総括

教科書で発展内容として取り扱われているこのテーマですが、その名の通りすべてを理解するのはなかなか骨が折れます。しかし、副教材や問題集で問題として登場するので、しっかりと理解しておいて損はありません。ちなみに一昔前は、「ハーシーとチェイスの実験について、標識されたT2ファージの割合の変化から遺伝されたT2ファージの割合を求める」という難問がありました。この問題は、最近はあまり見かけなくなりました、時代の変化かもしれません。

このように、大学入試の動向は時代とともに変わります。2017年大学入試問題正解生物編では、いくつかの実験が入試で見かけなくなったと書いてありました。その中に今回のテーマもありました。その後の本での追記はなかったので傾向がどう変わっているかはわかりませんが、教科書に載っている限りは理解しておいた方がよいと、管理人は思います。

おわりに

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以上でこの記事は終わりです。ご視聴ありがとうございました。

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POSTED COMMENT

  1. シカマル シカマル より:

    スライド3に誤りがありました。
    R型菌に病原性があると描いていましたが、誤りです。
    正しくは、“R型菌には病原性がない”になります。
    現在は修正しております。
    ご指摘いただいた“けん”様、ありがとうございました。
    管理人シカマルより

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