今回は、「高校生物」の教科書にはない遺伝の問題の解き方のうち、初歩の一遺伝子雑種の検定交雑・自家受精・自由交配の基本問題の解き方を紹介します。
なお、この記事は、中学生時代に学んだメンデル遺伝の基本を忘れてしまって遺伝の問題が全くわからない方を対象としたものです。
未完成ですが、遺伝の問題のまとめを貼っておきますので、よければ参考にしてください。
では、初歩でありながらやや発展の一遺伝子雑種の検定交雑・自家受精・自由交配の問題演習を始めましょう。
従来使われてきた遺伝の法則の用語「優性・劣性」は、「顕性・潜性」に変わります。
演習問題
まずは演習問題として、下のスライド1にある問題を解いてみましょう。標準解答時間は二遺伝子雑種がわからない方で20分、理系の方の理想的な時間で15分です。解けない場合は、すぐに解説を見て解き方を確認しましょう。
解き具合はいかがだったでしょうか。解答を見て、答え合わせをしてみましょう。もし、間違いがあった場合は、その下にある解説を見て学びなおしてみましょう。
解答
解答は、下のスライド2のようになります。
解説
問題1(1).検定交雑の単語を答えるだけ!
この問題は知識問題です。検定交雑という生物単語を答えるだけでした。
問題文にあるように、“検定交雑”とは、遺伝子型を明らかにするために潜性ホモ個体を交配することです。
問題1(2).検定交雑の結果から遺伝子型を明らかにする!
この問題は遺伝の問題です。検定交雑の結果から植物Xの遺伝子型を推測する問題でした。
一遺伝子雑種の検定交雑であれば、下のスライド3のような方形を用意すると比較的簡単に解くことができます。
スライド3の考え方は、
- 検定交雑なので、親個体の相手の配偶子の遺伝子型はaのみ。
- それに合わせて、親個体の遺伝子型を“??”とし、スライド3の左上の方形をつくる。
- 交雑の結果を書く。
- 交雑の結果から“??”を求める。
というようなものになります。
一遺伝子雑種の検定交雑は反射で解けるくらい素早く解けることが望ましいです。一遺伝子雑種の検定交雑を早く解く秘訣は、一遺伝子雑種の全ての交配のパターンを覚えることです。交配パターンを覚えておけば、親世代の交配とF1の関係を素早く導くことができます。
交配のパターンは、こちらの記事の問5に用意していますので、必要な方は繰り返し演習するとよいと思います。
問題1(3).F2からF1を、F1から親個体を推測する!
この問題は遺伝の問題です。F2からF1を推測し、さらにF1から親個体を推測する問題でした。
まず、F2の表現型の分離比に注目します。[A]:[a]=3:1となっていますが、この結果になる交配はAa×Aaのみです。よって、F1はAaと決定することができます。
次に、F1から親個体を推測します。植物Xの遺伝子型は??、検定交雑なので交配相手はaa、F1はAaということから、植物Xの遺伝子型はAAと決定づけることができます。これが解答になります。
問題2(1).普通にF2の分離比を求めよう!
この問題は遺伝の問題です。問題文にある流れに沿って、普通にF2の遺伝子型の分離比を求めるだけでした。
この問題を解く流れとしては、
- AAとaaの交配結果、F1の遺伝子型はAa。
- F1どうしの交配なので、交配は“Aa×Aa”となる。
- 交配の結果、F2の遺伝子型の分離比は、AA:Aa:aa=1:2:1
というものになります。基本的な交配パターンの問題でした。
問題2(2).自家受精の解き方を理解しよう!
この問題は遺伝の問題です。新しく“自家受精”という要素が加わった問題でした。
この問題での自家受精とは、同じ遺伝子型の個体どうしを交配することになります。つまり、
- AAの個体をAAと交配することは、自家受精。
- Aaの個体をAaと交配することは、自家受精。
- aaの個体をaaと交配することは、自家受精。
- AAとAaの交配、Aaとaaの交配、AAとaaの交配は自家受精ではない。
自家受精の意味がわかったところで、自家受精の問題の解き方を理解しましょう。この問題の流れは、下のスライド4のようになります。
スライド4をもう少しわかりやすく紐解くと、
- AAの自家受精 ⇒ 4AAが生じる(スライド左下の方形パターン)
- 2Aaの自家受精 ⇒ 2×(AA+Aa+aa)が生じる(スライド真ん中下の方形パターン)
- aaの自家受精 ⇒ 4aaが生じる(スライド右下の方形パターン)
となり、遺伝子型の分離比はAA:Aa:aa=6:4:6=3:2:3と約分して解答となります。2Aaの場合は2を掛けてあげることを忘れないようにしましょう。
自家受精はあくまでも同じ遺伝子型の個体どうしを交配することです。あとの問題の自由交配とは解き方が異なるので、解き方を混合しないように注意しましょう。
問題2(3).自家受精の解き方で解こう!
この問題は遺伝の問題です。問題2(2)と解き方は同じで、自家受精の解き方になります。
この問題の流れは、下のスライド5のようになります。
解き方は問題2(2)と同じなので解説は省略します。ちなみに、最後に約分を忘れないようにしましょう。
問題3.自由交配の解き方を理解しよう!
この問題は遺伝の問題です。新しく“自由交配”という要素が加わった問題でした。
自由交配とは、集団内で自由に交配が行われることです。例えば、100個体の集団が自由交配を行った場合、個体同士の交配は任意となります。自家受精は同じ遺伝子型どうしの交配でしたが、自由交配では集団内の個体が自由に交配します。
では、自由交配はどのように解くのでしょうか。実際の解き方では、
- 集団内の個体から生じる配偶子の遺伝子型の分離比を求める。
- 集団内の配偶子(雄性配偶子と雌性配偶子)の交配を行う。
という2つの手順を行います。
まずは、①の集団から生じる配偶子の遺伝子型の分離比の求め方を説明します。スライド6は考え方の基本となる部分の説明スライドです。下の注釈まで合わせて見てください。(それぞれの母細胞が3個だと例にしています。)
【スライド6の考え方】
1個のRRの遺伝子型の花粉母細胞からは4個の遺伝子型がRの精細胞が生じ、また1個のRrからは2個のRの精細胞と2個のrの精細胞が生じる。
また、1個のRRの遺伝子型の花粉母細胞からは1個の遺伝子型がRの精細胞が生じ、また1個のRrからは0.5個のRの卵細胞と0.5個のrの卵細胞が生じる。
1個の母細胞から生じる精細胞と卵細胞の個数は異なるが、結果として生じる遺伝子型の比率は同じになる。(⇒スライド7で数字を変える。)
上のスライド6から、雄性配偶子も雌性配偶子も個体から生じる分離比の比率は同じになることがわかります。たとえ、1つの細胞、1つの個体から生じる精細胞と卵細胞の個数には違いがあっても同じ分離比の比率になります。このことから、RR:Rr:rr=2:3:1の比率で個体が存在する集団の配偶子の遺伝子型の分離比は、次のスライド7のように求めます。
スライド7の左上部の数字を黄色にしていますが、一般的にはこの数字を使って配偶子の分離比を求めます。スライド6とあわせて見ると、精細胞を考えるときの半分、卵細胞を考えるときの2倍です。整数で簡単な分離比ということで用いられているのだと思います。
分離比が求まれば、あとはスライドの下部にあるように、集団内の配偶子の遺伝子型の分離比どうしを掛け合わせます。精細胞と卵細胞の分離比の比率は同じなので、同じものをかけあわせるだけです。その計算結果が、自由交配によって得られた次世代の個体の遺伝子型の分離比となります。
自家受精の直後に自由交配を勉強して、頭の中が混乱しているかもしれません。自家受精と自由交配では、明確に解き方の手順が異なってて、
- 自家受精:集団内の同じ個体どうしを交配する。
- 自由交配:集団内の配偶子の比を求めて配偶子の交配を行う。
というようになっています。何度か演習して、自家受精と自由交配のポイントをおさえるとよいでしょう。
問題4.自由交配の発展形!(雄の集団・雌の集団)
この問題は遺伝の問題です。問題3よりも自由交配の難易度が上がった問題になります。
解き方としては、まず雄と雌それぞれの集団内の配偶子の比率を求めます。雄と雌で集団中の遺伝子型の比率が異なるので、配偶子の比率も異なるからです。
問題3のようにして、集団中の配偶子の遺伝子型の比率を求めると、下のスライド8のようになります。
最後の答えは問題文で表現型と指定されているので、それに沿って答えます。
問題5.自由交配と伴性遺伝の複合問題!
この問題は遺伝の問題です。自由交配に伴性遺伝の要素が入った発展問題でした。
基本的な解き方は、問題3・問題4と変わりません。図説すると、下のスライド8のようになります。
伴性遺伝なので、X遺伝子とY遺伝子に分けて考えているだけでした。
総括
この記事で求めた能力は、以下の3つになります。
- 検定交雑で親個体の遺伝子型を推測できる。
- 自家受精の解き方ができる。
- 自由交配の解き方ができる。
自家受精と自由交配は、基本的に一遺伝子雑種でしか登場しません。しかし、検定交雑は二遺伝子雑種の独立の場合でも連鎖の場合でも登場します。どれもしっかりと理解して、高校生物の内容に近づけるように、頑張りましょう!
おわりに
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