今回は、「高校生物」の教科書にはない遺伝の問題の解き方のうち、一番初歩の一遺伝子雑種の交配の基本問題の解き方を紹介します。
中学生時代に学んだメンデル遺伝の基本を忘れてしまって遺伝の問題が全くわからない方を対象とした記事です。一遺伝子雑種は余裕だなと思う方は、以下の遺伝の問題まとめ一覧から他の記事を探してみてください。
では、まずは初歩中の初歩の一遺伝子雑種の交配の問題の解き方を始めましょう。
従来使われてきた遺伝の法則の用語「優性・劣性」は、「顕性・潜性」に変わります。
演習問題
まずは演習問題として、下のスライド1にある問題を解いてみましょう。標準解答時間は一遺伝子雑種がわからない方で15分、理系の方の理想的な時間で5分です。解けない場合は、すぐに解説を見て解き方を確認しましょう。
解き具合はいかがだったでしょうか。解答を見て、答え合わせをしてみましょう。もし、間違いがあった場合は、その下にある解説を見て学びなおしてみましょう。
解答
解答は下のスライド2のようになります。
解説
問1.減数分裂の基本をおさえよう!
この問題は知識問題と図の読み取り問題です。減数分裂を経て遺伝子がどのように分配されるのかという知識と、その分配のようすを図に照らし合わせる読み取りの能力が問われました。
問題中の図を丁寧に解説すると、下のスライド3のようになります。
減数分裂第一分裂前期では相同染色体の複製と対合が起きます。対合している4本の染色体を二価染色体と呼びます。この二価染色体は、2つの姉妹染色体から成り立っています。図ではAAの姉妹染色体とaaの姉妹染色体が対合しているのが、左から2番目の図です。そして減数分裂第一分裂の後期で二価染色体は2つに分かれますが、このとき2つの姉妹染色体として分かれます。つまり、AAの姉妹染色体とaaの姉妹染色体として分かれることになります。このことから、解答を導くことができます。
減数分裂のようすは知識として習得しておくべきものなので、高校生物の教科書や参考書を見て覚えておきましょう。
問2.対立遺伝子は対の染色体の同じ位置にある!
この問題は知識問題と図の読み取り問題です。ある1つの遺伝子は相同染色体の同じ位置にあることと、それを図で読み取る能力が必要でした。
遺伝子Aとaは1つの対立遺伝子なので、相同染色体の同じ位置に存在します。また、他にいくつかの遺伝子も加えた場合、下のスライド4のようになっています。
この知識を活かすと、選択肢①の図は相同染色体ではない染色体上に対立遺伝子が存在するので誤りであり、選択肢③は相同染色体でも異なる位置に対立遺伝子が存在するため誤りとなります。
相同染色体とは、(体細胞では)同じ大きさ同じ遺伝子を含む一対の染色体のことを指す。
問3.減数分裂の通りに答える、ただし約分を忘れない!
この問題は遺伝の問題です。配偶子の分離比は、コツをおさえてあっさりと解いてしましましょう。
最初に語句の説明をしておきます。
- 配偶子とは、個体のつくる生殖細胞のことを指します。なので、ヒトの場合は精子と卵のことを指します。生殖細胞は減数分裂によって生じます。
- 遺伝子型とは、“ある特定の遺伝子について、どのような遺伝子が対になっているかを表したもの”になります。
次に問題の解き方ですが、配偶子の分離比を求めるためにわざわざ毎回減数分裂の図を描くことはスマートではありません。管理人が配偶子の分離比を求める際は、下のスライド5を頭の中で済ませています。
「こういうやり方をするんだなぁ。」と感じてもらって、同じようにやってもらえれば早く求めることができると思います。なお、約分は必須で、これは数学のやり方に従っています。
配偶子の分離比の求め方も一種の“公式”のようなものだが、解けるようになればよいので解き方だけを理解しておこう。
問4.表現型は例のように表すのが普通!
この問題は遺伝の問題です。表現型を例にならって答えるだけの問題ですが、表現型の意味がわかっていない方にはわからない問題だったと思います。
まずは、語句の説明です。
- 表現型とは、持っている遺伝子の働きによってつくられる生物の形質(特徴)のことを指します。顕性遺伝子と潜性遺伝子の両方を持っている場合、顕性遺伝子による形質が発現します。
つまりこの問題は、発現する形質の遺伝子に[]をつけて答えればよいというものになります。これを改めて説明すると、下のスライド6のようになります。
②が迷うところかもしれませんが、先の語句の説明であった“顕性遺伝子と潜性遺伝子の両方を持っている場合、顕性遺伝子による形質が発現する”ことを踏まえれば、表現型を答えることができます。
今回は例にならって表現型を答えてもらいましたが、[A]や[a]のように表現型を表すことが普通です。この書き方を覚えておきましょう。
問5.一遺伝子雑種の交配パターンを完璧に!
この問題は遺伝の問題です。初めての方は戸惑ったと思いますが、これから遺伝の問題を練習していく場合はこの問5を頭の中で一瞬で解けることが必須になります。
まずは、語句の説明をします。
- 交配とは、2つの個体の生殖細胞を受精させることを指す。
- F1とは、親世代から生まれた次の子世代のことを指す。孫世代を表す場合はF2と表す。
では、①AA×AAの交配からしっかり説明していきたいと思います。次のスライド7を見てください。
交配をする場合は、交配表をつくることが解き方のポイントとなります。1つだけ見ても交配表の作り方や意味がよくわからないと思うので、①から⑥までの交配表をスライド8にまとめました。
スライド8を見て察しがついた方がいると思いますが、交配表とは“2つの個体の配偶子の遺伝子型をかけあわせてF1の遺伝子型をつくるための表”だと言うことができます。交配表をつくると簡単に次の世代の個体の遺伝子型がわかります。このようにして問5は解いてもらいたかったのですが、理系なら一遺伝子雑種の交配は頭の中で考えて解くことが理想的になります。
この交配表をつくることが、遺伝の問題を完全解答していくために必須です。最初は慣れないと思いますが、この描き方を覚えておきましょう。
問6.F1からF2を求める一般的な問題
この問題は遺伝の問題です。一遺伝子雑種のよくある問題として、F1からF2を求めるものがあります。解き方を理解してできるようになりましょう。
まず、この問題をどのように描きながら解くかをスライド9にまとめたので見てみましょう。
スライド9の①を書き足して②にし、そこから交配表の③をつくっています。F1の遺伝子型は親世代からわかり、F1どうしを交配するために交配表を描いた、というかんじです。
F2を求める場合、管理人はこのような手順を踏んでいます。どの参考書・問題集もこのようなステップを踏んでいるので、この描き方を理解して描けるようになることが望ましいと思います。
総括
今回の記事では、遺伝の問題を演習するうえで一番基本となる一遺伝子雑種の交配を解説させてもらいました。ある程度遺伝の問題がわかる方にとってはつまらないものだったでしょうし、全く遺伝の問題がわからない方にとっては戸惑いの連続だったと思います。このように、遺伝の問題を解くことができるかどうかは、問題の解き方、つまり解くための手順を知っているかどうかで分かれます。なので今回は、解くための手順を重点的に説明させてもらいました。
しかしながら、管理人の説明が十分でないことは自覚しています。管理人自身も遺伝の問題を解くときは、頭に染み付いた“こんなかんじで解く”というルーチンワークを論理的にやっているだけで、その“こんなかんじ”をうまく説明することができないのです。数学で例えるならば、公式と公式の使い方をコツなしに提供しているようなものです。ただ、“こんなかんじ”というものがとても大事であることは、わかっていただければと思います。
おわりに
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