今回は、「高校生物」の“ヒトの伴性遺伝と家系図”の問題の解き方を紹介します。伴性遺伝の問題のうち、1遺伝子の場合をヒトを例にして学びましょう。定番の問題をわかりやすく解説しています。なお、この問題では、メンデル遺伝の基礎が必要です。問題を解いてみて全くわからない場合は、まず参考書でメンデル遺伝の基礎を学ぶことをお勧めします。
追記:遺伝の基本レベルの解説記事もつくりました。下の記事は内部リンクをまとめたものになります。
今後、遺伝の法則の用語「優性・劣性」は「顕性・潜性」と言い換えられる予定になっているそうです。入試問題でも言い換えられる可能性が高いので、「顕性・潜性」の表現にも慣れておくとよいでしょう。
演習問題
まずは演習問題として、下のスライド1にある問題を解いてみましょう。標準解答時間は15分です。解けない場合は、すぐに解説を見て解き方を確認しましょう。
(補足:血友病は、伴性劣性遺伝です。なお、劣性伴性遺伝であるという補足は、定期テストや大学入試ではあまりないと思います。)
問題を解いてみてどうだったでしょうか。問2と問5がやや難しいですが、一度解き方を理解すれば簡単に解けるようになります。この問題を解けた人も解けなかった人も、下に続く解答と解説を確認してみましょう。
伴性遺伝の内容は、高校生物の教科書には掲載されなくなったようです。しかし、“性と遺伝”をテーマとする問題は、2018年現在でも有名大学で登場しています。2018年度の入試では、東京慈恵会医科大学や名城大学などで、ヒトの伴性遺伝の問題が見受けられました。なので、志望している大学の入試傾向をよく研究して、必要ならば対策するとよいでしょう。ちなみに、伴性遺伝の問題では、ショウジョウバエのX染色体上にある連鎖している2遺伝子の伴性遺伝の問題も1つのテーマなので、合わせて練習することをおすすめします。
解答
問1.伴性遺伝
問2.④
問3.(イ):D、(ウ):B
問4.E
問5.C
解説
問1.伴性遺伝の意味を知っておこう!
問題文中の(1)に当てはまる語句を答えなさい。
この問題は、知識問題です。“伴性遺伝”という語句を答えさせるだけの、ごく簡単な問題でした。
伴性遺伝の意味を、下のスライド2で確認しておきましょう。
ちなみに、ここまで深く覚えておく必要はありません。単純に、「性と関わりのある遺伝様式」と覚えておくだけでいでしょう。
性と関わりのある遺伝様式を、伴性遺伝と呼ぶ。
伴性遺伝の読み方ですが、「はんせいいでん」と「ばんせいいでん」の2つがあります。読み方や発音はどちらでも正解です。
問2.ヒトの伴性遺伝の例を覚えておこう!
ヒトで(1)の遺伝様式のものとして適切なものを、次の①~④の中から1つ選びなさい。
- ABO式血液型
- Rh式血液型
- 鎌状赤血球貧血症
- 赤緑色覚異常
この問題は、知識問題です。伴性遺伝による病気を答えさせることはあまりないと管理人は思っていましたが、ある大学で見かけたので、今回問題にしました。
高校生物においては、伴性遺伝が関与する病気を2つ覚えておけば十分だと思います。
- 血友病
- 赤緑色覚異常
ヒトの伴性遺伝の問題のテーマとして登場するのは、だいたいこの2つです。ちなみにWikipediaには、筋ジストロフィーの一種も伴性劣性遺伝によって発症すると書いてありました。詳しく知りたい方は、インターネットで伴性遺伝を検索してみるとよいでしょう。
ヒトの伴性遺伝の関わる病気として、血友病と赤緑色覚異常を覚えておこう!
問3.家系図のヒトの遺伝子型を読み取れるようになろう!
図中の(イ)、(ウ)の遺伝子型として適切なものを、次のA~Eの中から選びなさい。ただし、優性遺伝子をA、劣性遺伝子をaとする。
この問題は、図の読み取り問題です。家系図上のそれぞれの人物について、遺伝子型を読み取ることができるようになりましょう。
まず、前提として理解しておいてほしいことを下のスライド3にまとめました。
このスライド3の条件で、下のスライド4の状態まで遺伝子型を書き足すことができます。
(イ)の遺伝子型はわかったので、(ウ)の遺伝子型を考察しましょう。健康な女性は、遺伝子型が2通り考えられるので、両方のパターンで交配した場合の子供の表現型と遺伝子型を確認します。すると、下のスライド5のようになります。
こうして(ウ)の遺伝子型も決定することができました。なおこのことから、(ク)はXAXAとXAXaの2通りの可能性を排除できないことがわかりますね。
初めて解くときは手順が複雑で難しいが、慣れると1分以内に家系図の遺伝子型を判断できるようになるので、繰り返し練習しておこう。
問4.交配したときの性染色体の挙動を理解しよう!
(カ)の女性と(キ)の男性の結婚で生まれる子が血友病を持つ確率は何%か。次の選択肢から1つ選びなさい。
この問題は、図の読み取り問題と確率の計算問題です。(カ)と(キ)の2人の子供が健康なので100%を選ぶというような問題ではありません。(カ)と(キ)から生まれる子供が血友病を持つ可能性、つまり確率を答えるものになります。
問4を解く手順は、次のようなかたちになります。
- (カ)の遺伝子型を(ア)と(イ)を交配して求める。
- (カ)と(キ)の交配を作図して、子供の遺伝子型を求める。
- 確率の計算をする。
手順1から3まで、下のスライド6にまとめました。
結果、選択肢のEが解答となります。問4の解説は、以上になります。
子供が血友病を発症する確率を計算するためには、親の交配の図をつくって、表現型のパターンを分ける必要がある。
問5.交配の可能性をすべて網羅して確率を出そう!
(ク)の女性が(オ)の男性と結婚した場合、生まれる子が血友病を持つ確率は何%か。問4の選択肢から1つ選びなさい。ただし、問題の設定で考えられる可能性をすべて考慮して、答えなさい。
この問題は、図の読み取り問題と確率の計算問題です。ここまでの解説の流れでこの問5を紐解くためには、次の2つの要点をおさえることが大事になります。
- 問3を答えるときに、(ク)には2つの遺伝子型があり、それぞれの確率は1/2である。
- 作図を誤解して簡略化しない。
この2つをスライドで表すと、次のスライド7のようになります。
結果、選択肢Cの25%が答えとなります。しかし、問題を解いた人のなかには、選択肢Dの33%を選んでしまった人もいるかと思います。この間違え方をした人は、スライド7の赤字で「簡略しない」と書いた部分を簡略している可能性が高いです。どういうことなのか、解けた人も下のスライド8を見て確認しましょう。
このように、メンデル遺伝を効率よく解く際の簡略化を使うと、今回の問題は間違ってしまいます。簡略化してよいのは、あくまでその作図だけが答えを導く範囲のときだけです。他の場合と確率も含めないといけない場合は、すべての場合を考慮しなければなりません。なので、今回のように2つ作図する際は簡略してはならないのです。詳しくは確率の話になるので、学校や塾の数学の先生に聞いてみることをお勧めします。
問5では、遺伝子型の可能性をすべて考慮することに加え、確率の計算を正しく行うことができたかどうかが、この問題の明暗を分ける。
総括
伴性遺伝は教科書に載っていないので、初見で解くことはかなり難しいです。しかし、一度解き方を理解すると点を取りやすい問題でもあります。作図をしながら問題を解いていくことが、正しく解答する最適の手だと言うことができるでしょう。ただし、メンデル遺伝の基礎が身についてないと意味不明だと思うので、メンデル遺伝をしっかり演習しておくことが大事だと思います。
なお最初に少し紹介しましたが、伴性遺伝の問題では他にも次のようなテーマがあります。
- ショウジョウバエの伴性遺伝、性染色体上の2遺伝子を駆使するタイプ
- 三毛猫の伴性遺伝、常染色体と性染色体の複合問題
この2つのテーマは管理人もいつか解説したいと思いますが、当分先になるので、もし解き方を知りたい場合はGoogle検索したり問題集を見てみたりするとよいでしょう。
遺伝の問題のまとめ記事
遺伝の問題について、管理人がつくった問題解説をまとめました。是非ご活用ください。
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