この記事は、高校生物基礎の第2章『遺伝子とその働き』で登場する“シャルガフの規則と塩基の相補性”、加えて“一本鎖DNAの塩基の割合の計算問題”の解説記事です。
※この記事は、下の解説動画を文章化したものです。ちなみに、動画制作者=管理人です。
はじめに
今回は、一本鎖DNAの塩基の割合を求める問題の解き方を解説します。この問題がわからない人は、シャルガフの規則を勘違いして使っていることが多いです。実際は、塩基の相補性を使うのが、正しい解き方です。丁寧に解説しますので、ぜひ解き方を知ってほしいと思います。生物基礎を学んでいる高校1年生または2年生、それと、大学受験を控えている文系生物基礎選択の3年生におすすめです。ではでは、始めましょう。
シャルガフの規則について
おさらい
まずは、確認をしましょう。シャルガフの規則とは、どんなことだったでしょうか。A=T、G=C、とすぐに思い浮かぶと正しいですが、もっと正確に覚えましょう。詳しく定義すると、二重鎖DNAにおける塩基の割合は、、アデニンとチミンで同じであり、また、グアニンとシトシンで同じである、というようになります。とても大事なのは、二重鎖DNAにおいてA=T、G=Cが成り立つ、ということです。この、二重鎖DNAにおいて、ということを、必ず覚えておきましょう。
演習問題
では、基本問題に入りましょう。問題文を読みます。あるDNAの塩基の割合を調べると、アデニンの割合は30%だった。このときのチミン、グアニン、シトシンの割合を求めなさい。シャルガフの規則を使って、計算してみてください。
解説
基本問題の解説にうつります。この問題は、3つの手順で解くことができます。まず、アデニンの割合が30%とわかっているので、シャルガフの規則のA=Tをつかって、チミンの割合は30%だとわかります。次に、割合の最大値は100%なので、グアニンとシトシンを足した数値を求めることができます。100からアデニンとチミンの割合を引きましょう。すると、グアニンとシトシンを足した数値は、40%だとわかります。最後に、G=Cなので、グアニンもシトシンも割合が20%になります。以上のような解き方で、答えを求めることができました。もう一回言いますが、この基本問題は、二重鎖DNAの場合なので、シャルガフの規則をそのまま使うことができたのです。
シャルガフの規則が使えない場合について
次に移ります。一本鎖のDNAにおいては、シャルガフの規則を使うことはできません。理由は簡単で、一本鎖のDNAのアデニン、チミン、グアニン、シトシンの割合は異なるからです。割合が異なることを、簡単に説明します。
塩基配列で確認する方法が、もっとも簡単です。塩基が2列並んでいますが、これは、二重鎖DNAの塩基が対をなしている図になります。上の列と下の列の合算で、塩基の数を数えてみてください。すると、アデニンとチミンの数は7個で同じであり、グアニンとシトシンの数は11個で同じです。つまり、二重鎖DNAにおいては、シャルガフの規則である、A=T、G=Cが成り立ちます。
では、一本鎖DNAの場合はどうでしょうか。試しに赤色にしている上の列だけで数えてみましょう。すると、アデニンは3個、チミンは4個、グアニンは6個、シトシンは5個です。アデニンとチミンの数は異なっており、またグアニンとシトシンの数も異なっています。つまり、一本鎖DNAの場合は、A=T、G=Cではなく、シャルガフの規則は成り立たないのです。
塩基の相補性について解説
塩基の相補性の説明します。
二重鎖DNAの塩基の並びは、それぞれアデニンとチミン、グアニンとシトシンが対になっています。なので、一方の一本鎖DNAのアデニンともう一方の一本鎖DNAのチミンの割合は同じになります。これはグアニンとシトシンについても同じように言うことができます。このことを、塩基の相補性と呼びます。説明ではわかりにくいので、図を見てもらいましょう。
この図は、二重鎖DNAが塩基対を成していることを表しているものです。片方の鎖のアデニンには、もう一方の鎖のチミンが結合しています。また、片方の鎖のグアニンには、もう一方の鎖のシトシンが結合しています。なので、片方の鎖のアデニンの数ともう一方の鎖のチミンの数は同じになります。同じく、片方の鎖のグアニンの数ともう一方の鎖のシトシンの数は同じになります。これが、塩基の相補性です。
一本鎖DNAの塩基の割合の計算問題
演習問題
一本鎖DNAの塩基の割合を求める計算問題を紹介します。
では、問題文を読みます。
ある生物のDNAを構成するアデニン、チミン、グアニン、シトシンの割合を調べたところ、グアニンとシトシンの合計が46%であった。また、2本鎖の一方では、アデニンが28%、シトシンが22%であった。もう一方の鎖のアデニン、チミン、シトシンの割合を求めなさい。方針だけ確認しておきましょう。
下の図のように、二重鎖をほどくと解きやすいです。では、問題にチャレンジしてみましょう。
解説
二重鎖DNAでは、グアニンとシトシンを足した数が46%と書いてありました。省略しますが、この割合は、一本鎖DNAにおいても成り立ちます。なので、両方のDNA鎖にグアニンとシトシンを足した数値を書き込みましょう。
また、問題文には、一方の鎖のアデニンの割合が28%、シトシンの割合22%と書いてありました。一方だけにアデニン28%、シトシン22%と書き込みましょう。
一方の鎖では、シトシンが22%、グアニンとシトシンを足した数値が46%とわかっているので、その鎖のグアニンの数値がわかります。グアニンの割合は、46から22を引けば24となります。
一方の鎖の塩基すべての割合を足した値は100%となります。ここまでで一方の鎖では、アデニン、グアニン、シトシンの割合がわかったので、一方の鎖のチミンの割合は100%からその3つの塩基の割合を引けば求めることができます。100ー28ー24ー22をして、チミンが26%だとわかりました。
一方の鎖の塩基の割合がすべてわかったので、ここで塩基の相補性を使ってもう一方の鎖の塩基の割合を求めます。
ここまでで、一方の鎖の塩基の割合が4つすべてわかっています。塩基の相補性を使ってもう一方の鎖の塩基の割合を求めてみると、下の図のようにこのようになりました。
ここで、もう一方の鎖の塩基の割合がすべて求まったので、答えを書くことができます。
解答を確認すると、このようになります。答えは、アデニン26%、チミン28%、シトシン24%となりました。解き方は、以上のようになります。
解き方の再確認をしておきましょう。方針は、まず二重鎖をほどいた絵を描いてわかる範囲で塩基の割合を求めていき、そして塩基の相補性を使ってもう一方の鎖の塩基の割合を求める、というようなかたちでした。
総括
シャルガフの規則や塩基の相補性の意味自体は、簡単に理解しやすいものです。しかし、それを問題を解くにあたってどのように使えばよいかについては、練習を重ねる必要があります。特に今回の一本鎖DNAの塩基の割合を求める際は、シャルガフの規則でなく塩基の相補性を使うことを初見で思いつくことは難しいでしょう。なので、経験がのちのテストに反映されるテーマだと思います。
今回の記事では、最後のスライドの説明に方針として図を描いてみることを推しましたが、他の問題でも自分でグラフをつくったり図を描いたりすることで解きやすくなるものは多いです。頭の中ですべてを考えるのではなく、テスト用紙の余白をうまく使うこともまた大事だと言えるでしょう。いろんな問題を練習する際は、グラフや図を描くことで問題を解くことが楽になるかどうかの確認をしましょう。
おわりに
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