この記事では、2020年度センター試験本試験の高校生物基礎で出題された問題の解説を行っています。過去問演習のお役に立てたら幸いです。
※解説内容は高校生物基礎であり、高校生物ではないことにご注意ください。
生物基礎2020年度本試験の問題と解答
著作権の関係で、ここでは問題を掲載することができません。なので、リンクを貼っておきます。問題については河合塾を紹介していますが、その他大手予備校や新聞社のHPからもダウンロードができるようです。解答は、“独立行政法人大学入試センター”が正式に公表しています。
追記になりますが、大学入試センターの公式サイトに問題がアップロードされています。
翌年度の問題が大学入試センターの公式サイトで更新された場合、urlの都合で異なる年度の問題のページが表示される可能性があります。その場合、大学入試センターの公式サイト内で該当する年度の問題をお探しください。
解説
解答番号1:細胞小器官
この問題は知識問題です。真核生物の細胞小器官に関する5つの記述のうち、誤っているものを選ぶ問題でした。
1つ1つ見ていきましょう。
①核には、DNAとタンパク質を主な成分とする染色体が含まれる。
①は正しい記述でした。文章にあるように、染色体はDNAとタンパク質から成る物質です。生物基礎レベルdでは発展内容になりますが、このタンパク質にはヒストンという名称があります。
②ミトコンドリアで行われる呼吸では、水がつくられる。
②も正しい記述でした。この文章を確認するためには、呼吸の反応式を書き出すことがよいと思います。反応式は、『有機物+酸素→二酸化炭素+水+化学エネルギー(ATP)』と生物基礎で習うので、反応後に水がつくられることが正しいと判断することができます。
③ミトコンドリアは、核とは異なる独自のDNAをもつ。
③も正しい記述でした。ミトコンドリアと葉緑体には、核のDNAと異なる独自のDNAがあることを、“細胞内共生説”で習います。
④葉緑体やミトコンドリアでは、ATPが合成される。
④も正しい記述でしたが、迷いやすい選択肢となっています。生物基礎レベルの光合成の反応式は、『二酸化炭素+水+光エネルギー→有機物+酸素』と紹介されており、反応式だけではATPが合成されるかどうかは判別できません。しかし、教科書には“光エネルギーを使ってATPを合成し、ATPを使って有機物を合成する”という細かなことが文章化されているので、教科書を細部まで読み込んでいる方は、迷わず正しい文章であると判断することができます。
⑤葉緑体に含まれる主な色素は、アントシアン(アントシアニン)である。
⑤が誤った記述です。アントシアン(アントシアニン)は、液胞に含まれる色素です。このことだけで誤っていると判断することができるでしょう。ちなみに葉緑体に含まれる色素を生物基礎レベルで挙げるならば、“クロロフィル”になるでしょう。
解答番号2:ミクロメーターを使った長さの計算
この問題は計算問題です。ミトコンドリアの長さの数値をミクロメーターの計算で求める問題でした。
この問題が難しい理由は、ミクロメーターの公式とされるものを誤って使ってしまう可能性があることです。つまづく要点と解決のヒントは、次のスライド1のようなものになります。
スライド1にあるように、ミクロメーターの計算の公式としてよく使うものでは、対物ミクロメーターと接眼ミクロメーターともに“目盛り数”を扱います。しかし、リード文にある対物ミクロメーターは50μmとあり目盛り数ではありません。なので、いつもよく使う公式を使うことはできないのです。
では、どのように解くのでしょうか。ヒントは、スライド1の一番下にある『対物ミクロメーターの目盛り数は、実寸だったかもしれない…。』という気づきです。接眼ミクロメーターの1目盛りの長さをいつもわざわざ求めていた理由は、接眼ミクロメーターの目盛りが実寸ではないからです。しかし、対物ミクロメーターの目盛りは、(基本的には)1目盛りが10μmになるように作られており、実寸になります。
以上のような気付きのあと、立てる計算式は比がよいでしょう。
接眼20目盛り:対物50μm=接眼2目盛り:ミトコンドリアの長さ(μm)
⇒ミトコンドリアの長さ=5μm
『接眼ミクロメーターの目盛りあたり、(対物ミクロメーターで)実寸いくら』なのだから…、という形の比の立て方になります。
なお、仮にスライド1のいつもの公式に誤って当てはめてしまった場合は“ミトコンドリアの長さは50μm”という誤った計算結果が出てしまいますが、そもそも生物基礎の『細胞などの長さ』の単元ではミトコンドリアの直径は約2~3μmと習うので、計算の仕方が誤っていると気づくことのできる要素となっています。選択肢に50μmがないのも、誤りに気付くポイントでしょう。
センター試験で登場する典型問題は、必ずしもパターンで解けるとは限らない。
解答番号3:動物細胞の構成成分
この問題は知識問題です。ヒトなどの動物細胞の構成成分の質量比で、水の次に多く含まれるものを選ぶ問題でした。
答えはタンパク質です。これに関しては生命現象そのままの内容であり、教科書に載っている通りとしか説明のしようがないです。管理人の下の記事でも扱っているので、間違ってしまった方は見てみるとよいでしょう。
教科書を確認してみたのですが、東京書籍と実教出版にはこの内容の記載があり、数研出版・第一学習社・啓林館には記載がなかったです。管理人の経験では、どこか1社でも取り扱いがあるとセンター試験で出題される可能性があると思っているので、使っていた教科書によって差が出る問題だったと言えるでしょう。
管理人が基本的に使う教科書は数研出版と第一学習社なので、私が先生だった場合、この内容を教えていなかったかもしれません。高校生物では間違いなく教えるのですが…。生物基礎の難しい所以ですね。
解答番号4・5・6・7:セントラルドグマと複製
この問題は知識問題です。生物基礎レベルでの“セントラルドグマ”と“複製”を扱った、文章の穴埋め問題でした。
まず、Bのリード文に関してですが、無視して問題ないです。問4・問5に関係のない内容であり、読んだ受験者をただ悩ませたいだけの内容でした。
では、解答番号4~7の内容を紐解いていきましょう。
遺伝情報はDNAからRNA、そしてタンパク質へと一方公に流れていくという考え方がある。この考え方を【ア】という。
セントラルドグマに関する基本的な説明があるので、【ア】の解答番号4は“セントラルドグマ”の選択肢を選ぶことになります。
…DNAから【イ】されたRNA…
この一部分だけで、【イ】の解答番号5は“転写”を選ぶことができます。DNAからRNAが合成される過程を“転写”と呼びます。
…RNAの塩基配列、さらにそこから【ウ】されたタンパク質…
この部分だけで、【ウ】の解答番号6は“翻訳”を選ぶことができます。RNAからタンパク質が合成される過程を“翻訳”と呼びます。
…、DNAを鋳型にDNAを合成する【エ】…
少し難しいですが、この部分だけで【エ】の解答番号7は“複製”を選ぶことができます。“DNAの複製”では、二本鎖DNAが分かれ、一本鎖DNAを鋳型にして新しい二本鎖DNAが合成されます。
単語の穴埋め問題は、穴埋め部位の前後を読み解くことによって答えることができる場合が多い。
解答番号8・9:相補的な塩基配列
この問題は読み取り問題です。問題文で指定された塩基配列に相補的な「DNAの塩基破裂」と「RNAの塩基配列」を答える問題でした。
問題文を読むと、基準となる塩基配列は「ATGTA」であることがわかります。この塩基配列に対して塩基の相補性を使って、DNAとRNAの塩基配列を答えることになります。まとめると、下のスライド2のようになります。
当然ではありますが、DNAとRNAでは塩基の相補性が異なります。一本鎖DNAどうしの塩基の相補性は、Aに対してT(逆も可)、Gに対してC(逆も可)という形になっています。しかし、DNAからRNAが転写される場合、DNAの塩基からRNAの塩基への相補性は、Aに対してU、Tに対してA、Gに対してC、Cに対してGとなっており、DNAのA(アデニン)はRNAのU(ウラシル)に相補的となっています。
DNAとRNAでは、相補的な塩基が異なる。特にウラシル。
解答番号10:遺伝子の本体がDNAであると証明した実験
この問題は知識問題です。『遺伝子の本体=DNA』の実験群のうち、グリフィスの実験とエイブリーの実験についての、文章の穴埋め問題でした。
下の内部記事で詳しく解説しているので、ここでは説明を省略します。
解答番号11:魚類の塩類濃度調節
この問題は知識問題です。淡水魚と海水魚の体液濃度調節のしくみを踏まえて、文章に適切な語句を埋める問題でした。
淡水魚と海水魚の体液の塩類濃度が、尿の塩類濃度と比べるとどうなのかについて答えるのが文章中の【ア】と【イ】です。これに関しては知識であり、次のように答えることができます。
・淡水魚の体液の塩類濃度は、尿の濃度と比べると【ア:高い】。
・海水魚の体液の塩類濃度は、尿の濃度と比べると【イ:ほぼ等しい】。
出題者の意図として、海水魚の尿の濃度を『低い』と誤答させたい気配を感じますが、実際の海水魚の生命現象では体液と尿の塩類濃度はほぼ等しいです。
【ウ】に関しては、次の問題文が大事になってきます。
…、淡水魚と海水魚の体液の塩類濃度がほぼ等しいことから、…。
【ウ】では、淡水魚の尿の塩類濃度と海水魚の尿の塩類濃度の比較になるので、次のように考えることが適切でしょう。
- 淡水魚の体液の塩類濃度 > 淡水魚の尿の塩類濃度。
- 海水魚の体液の塩類濃度 ≒ 海水魚の尿の塩類濃度。
- 『淡水魚の体液の塩類濃度』=『海水魚の体液の塩類濃度』なので、②の式を①に代入。
- 海水魚の尿の塩類濃度 > 淡水魚の尿の塩類濃度。
そして、【ウ】の前後の文脈は、
淡水魚の尿の塩類濃度は、海水魚の尿の塩類濃度と比べると【ウ】ことが分かる。
となっているので、先の④を踏まえれば、【ウ】に『低い』という選択肢を当てはめることができます。
淡水魚と海水魚の体液濃度調節は、覚えることが多くて鬼門です。しかし、“浸透圧”という化学現象を踏まえれば、(海水魚の尿濃度を除いて)理解でしくみを導くことができます。下の内部リンクで導き方を紹介しているので、ご参考下さい。
解答番号12:体内の塩類濃度調節に関する穴埋め
この問題は知識&考察問題です。鰓の塩類細胞のはたらきと遡上を行うサケのホルモン調節についての問題文について、空白の前後の文脈から適切な語句を選ぶ問題でした。
【エ】から【キ】まで4つの空白があるので、1つずつ読み取っていきましょう。
…、【エ】が合成される場であるミトコンドリアを多く持ち、そのエネルギー…。
ミトコンドリアで合成される代表的なものと言えば、呼吸で生成される物質になります。解答番号1でも紹介しましたが、生物基礎レベルでの呼吸の反応式は『有機物+酸素→二酸化炭素+水+化学エネルギー(ATP)』というものです。【エ】の選択肢は『アミノ酸』か『ATP』ですが、反応式の生成物にあるのはATPなので、【エ】はATPと判断することになります。文脈の「そのエネルギー」からも、生物のエネルギー源であるATPを選ぶことが正しいと言えるでしょう。
…塩類の輸送を行っている。淡水魚の塩類細胞(以後、淡水型とよぶ)は、【オ】から【カ】への輸送を行い、…。
淡水は塩類をほとんど含んでおらず、淡水魚にとって“低張液”であると言えます。浸透圧のことを考えると、淡水の水分は淡水魚内にどんどん浸透してくるため、淡水中の塩類も能動的に吸収しなければ、淡水魚の体液の塩類濃度が低下してしまうと考えることができます。ゆえに、淡水魚の塩類細胞は、外界(体外)から体内への塩類の輸送を行っていると判断することになるでしょう。
…、海水魚の塩類細胞(以後、海水型とよぶ)は、【カ:体内】から【オ:外界】への輸送を行う。
淡水魚についての問題文で【オ】と【カ】を判別できましたが、念のため海水魚についても触れておきます。人間が海水をしょっぱいと表現するように、海水には高濃度で塩類が溶けています。よって、海水は海水魚にとって“高張液”であると考えることができるでしょう。浸透圧のことを考えると、海水魚体内の水分は高張である体外(海水)にどんどん浸透してしまうため、能動的に海水を飲む必要があり、このとき吸収した多量の塩類は体外に排出しなければなりません。よって、塩類細胞では、塩類を体内から外界へ輸送していると考え、淡水魚で答えた選択肢が正しいと判断することができるでしょう。
…、ヒトと同様に【キ】から放出される成長ホルモンが関わっている。
ヒトでの成長ホルモンの分泌元は、脳下垂体前葉です。サケとヒトが同様であると明記されていることから、脳下垂体を選ぶことになります。
この問題では単元の異なる3つの生命現象が含まれていました。このような出題を“分野横断的”と呼びますが、けっして入試で珍しいものではありません。現受験生が難関私立・国立二次試験の対策を行うとき、未受験生が来年度以降大学入学共通テストを受験するときに、分野横断的な問題の演習は大事になってくると管理人は感じています。
解答番号11の解説でも紹介したように、魚の体液濃度調節を理解する際、浸透圧も一緒に習得することが望ましい。
解答番号13:魚の種類と外界の塩類濃度の関係
この問題は図の読み取り&考察問題です。コイとカレイの違いを体液と外界の塩類濃度のグラフに当てはめ、『沼』の塩類濃度を考察する問題でした。
日常生活を送っていれば、文系の高校生でも“コイは淡水魚”・“カレイは海水魚”と理解することができると思います。この理解が、問題を解く大前提となります。
また、問題文には、
…、河口から約20km上流の河川とつながっている沼で、…。
とあることから、この沼を“汽水域”(淡水と海水が混ざる場所)と考えることが妥当でしょう。汽水域で「淡水魚のコイと海水魚のカレイが釣れた」と、読み解くことができます。
ここからが図1の体液および外界の塩類濃度のグラフの読み取りになります。グラフの読み取りに関しては、下のスライド3のように読み取ることになります。
【ク】の魚は、グラフ中の「硬骨魚類が長期間生存できる体液の塩類濃度」を考えると、外界の塩類濃度が約1.5%以上のとき生存することができません。対して【ケ】の魚は、グラフの最大値である3.0%まで生存することができます。海水の濃度が何%なのかはわかりませんが、外界の塩類濃度の値が高くても生存できる【ケ】の方が海水魚であると判断するのが妥当です。よって、【ク】はコイ、そして【ケ】はカレイだと判断することができます。
次に、問題文中の『沼』の塩類濃度の値がどれほどかを考えることになります。問題文にはこの『沼』でコイとカレイの両方が釣れたとあるので、コイとカレイの両方が生存できる外界の塩類濃度をグラフから読み取ることになります。生存できる範囲を読み取ると、下のスライド4のようになります。
グラフ中の「硬骨魚類が長期間生存できる体液の塩類濃度」をコイとカレイに当てはめ、どんな外界の塩類濃度のときにそれぞれ生存できるかの範囲を可能な限り正確に読み取ります。すると、外界の塩類濃度について、コイの場合約1%未満、カレイの場合約0.3%以上のときに生存できます。つまり、両者が生存できる外界の塩類濃度の範囲は、約0.3以上1.0%未満(以下でもよい)と読み取ることができます。
ここまで読み取って『沼の塩類濃度』の選択肢を見ると、0.2%、0.9%、1.6%、2.3%の4つのうちのどれかとなっています。上記の範囲を満たすのは0.9%のみなので、0.9%を解答として選ぶことになります。
生存できる外界の塩類濃度の範囲を読み取ることが大事と言える。
解答番号14:細胞性免疫のしくみ
この問題は図の読み取り&知識問題です。細胞性免疫のしくみについて、問題文の空白を埋める問題でした。
細胞性免疫における免疫細胞P・Q・R・Sについて、読み解いていきましょう。
体内に侵入した抗原は図2に示すように、免疫細胞Pに取り込まれて分解される。免疫細胞QおよびRは抗原の情報を受け取り活性化し、…。
この文章から、免疫細胞Pは、免疫細胞QとRに抗原提示をする細胞だとわかります。細胞性免疫のしくみで最初に抗原提示を行う免疫細胞は樹状細胞なので、免疫細胞Pは樹状細胞だと判断できます。図2の免疫細胞Pが突出があるように描かれていることも、免疫細胞Pが樹状細胞であると判断してよい一因です。
…、免疫細胞Qは別の免疫細胞Sの食作用を刺激して病原体を排除し、…。
免疫細胞Sには食作用があるので、リンパ球ではなく食細胞であると判断することになります。また、この文章では免疫細胞Qがと食細胞(免疫細胞S)のはたらきを促すと解釈できるので、免疫細胞QはヘルパーT細胞であると判断するのがよいでしょう。
…、免疫細胞Rは感染細胞を直接攻撃する。
細胞性免疫において、感染細胞を直接攻撃するのはキラーT細胞です。
以上のことから、免疫細胞Pは樹状細胞、QはヘルパーT細胞、RはキラーT細胞、Sは食細胞(おそらくマクロファージ)と判断できたので、文章中の空白を埋めましょう。
免疫細胞Pは【コ】であり、免疫細胞Qは【サ】である。免疫細胞P~Sのうち記憶細胞になるのは【シ】である。
免疫細胞Pは樹状細胞、QはヘルパーT細胞とわかっているので、選択肢から選ぶだけです。次に記憶細胞になる細胞はどれかという【シ】についてですが、リンパ球であるヘルパーT細胞とキラーT細胞が当てはまるので、QとRが該当することになります。
生体防御と免疫に関して学習したい方は、下の内部記事をご参照ください。生物基礎レベルで教科書解説を行っています。
解答番号15:免疫の考察問題
この問題は考察問題です。体液性免疫において対照実験である実験1を読み解き、実験1の結果として適切なものを選ぶ問題でした。
図3がありますが、これをまとめ直すと、下のスライド5のようになります。
※スライド5では、抗体産生細胞数が少し増えたことを“+”、多く増えたことを“+++”で示しています。なお、情報を整理した結果、bとeはほぼ似通った実験方法であることがわかります。
抗体産生細胞数が増える条件を整理してみましょう。
スライド5で“+”または“+++”の結果になるためには、抗原とB細胞の組み合わせが必要であることがわかります。また、cの『抗原+B細胞』の組み合わせの結果が微増の“+”であったことに対して、bとeの『B細胞以外のリンパ球+抗原+B細胞』はたくさん増えた結果である“+++”です。つまり、抗体産生細胞が増えるためには、最低でも『抗原+B細胞』の組み合わせであり、細胞数増加をさらに促すためには『B細胞以外のリンパ球』が必要であると考察することができます。
上記の考察に適した選択肢は、下の④でした。
④:B細胞を除いたリンパ球には、B細胞を抗体産生細胞に分化させる細胞が含まれる。
念のため、①・②・③・⑤が適切ではないことを確認しておきましょう。
①:B細胞は、抗原が存在しなくても抗体産生細胞に分化する。
スライド5のaでは抗体産生細胞がほぼ増えていないことから、B細胞が抗体産生細胞に分化するためには抗原が必要かもしれないと考えられるので、①の選択肢は不適です。
②:B細胞の抗体産生細胞への分化には、B細胞以外のリンパ球は関与しない。
解答であった④と逆の説明であり、不適です。実験結果から、B細胞を除いたリンパ球が関与していることが考察できます。
③:B細胞を除いたリンパ球には、抗体産生細胞に分化する細胞が含まれる。
B細胞を除いたリンパ球にも抗体産生細胞に分化する細胞が含まれるのであれば、スライド5のeで抗体産生細胞が増加するはずです。よって、不適です。
⑤:B細胞を除いたリンパ球には、B細胞が抗体産生細胞に分化するのを妨げる細胞が含まれる。
④が適切である理由で書きましたが、『妨げる』ではなく『促す』であり、不適です。
文系の学生にとっては難しいかもしれないが、対照実験では情報を整理することが解答への近道である。
2019年度センター生物基礎では、過酸化水素の分解反応についての対照実験が出題されました。なので、来年度の大学入学共通テストでも、対照実験が出題される可能性は十分にあると思います。
解答番号16・17・18:バイオームと植物名
この問題は知識問題です。問題文にあるバイオームに適切な植物名を答える問題でした。
バイオームと植物名に関しては暗記事項になります。植物名を確認したい方は、下の内部記事をご参照ください。
解答番号19:二酸化炭素の循環
この問題は知識&図の読み取り問題です。生態系における元素の循環について、図中の空欄を埋める問題でした。
生態系における元素の循環については、生物基礎では二酸化炭素と窒素が登場します。選択肢にも二酸化炭素と窒素があることから、図が炭素循環と窒素循環のどちらなのかを判断しなければなりません。
図に関しては、炭素循環であると判断するのが妥当でしょう。窒素循環の場合であるならば、“窒素固定細菌”、“脱窒素細菌”、“亜硝酸菌”、“硝酸菌”などの需要な生物を図に盛り込む必要がありますが、問題にある図には記載がないため炭素循環であると判断してよいでしょう。
図に語句と矢印を埋め込むと、次のスライド6のようになります。
解答をする順番ですが、【エ】、【オ】、【ク】、【カ】、【キ】の順で答えるとよいでしょう。筋道は、次のようになります。
- 【エ】:炭素循環と判断したので、大気中にある気体は二酸化炭素。
- 【オ】:生産者は、呼吸によって二酸化炭素を放出し、光合成によって二酸化炭素を吸収するので、矢印は両方向に伸びる。
- 【ク】:生産者から一次消費者への矢印は摂食なので、右方向である。
- 【カ】:一次消費者を摂食するのは、二次消費者である。
- 【キ】:分解者は、呼吸によって二酸化炭素を放出する。
以上のような方針で、解くことができました。
解答番号20:生態系でのエネルギー
この問題は知識問題です。エネルギーの移動について、最も適切な記述を選ぶ問題でした。
1つずつ見ていきましょう。
①:熱エネルギーの一部は、生物によって化学エネルギーに変換される。
基本的に生物は熱エネルギーを化学エネルギーに変換することができません。よって、①は不適です。
②生態系内を流れるエネルギーは、最終的には熱エネルギーとなって生態系外へ出ていく。
これが正解です。熱エネルギーは循環せず、最終的には生態系外へ出ていきます。
③:熱エネルギーの一部は、生物によって光エネルギーに変換される。
熱エネルギーを光エネルギーに変換できる生物は、生物基礎・高校生物レベルではいない(たぶん地球上に全く存在しない)ので、不適です。なお、高校生物レベルになりますが、化学エネルギーを光エネルギーに変換できる生物は、オワンクラゲやホタルイカなどが当てはまります。
④:植物は熱エネルギーを放出しない。
不適です。どの生物も代謝を行っているので、化学反応の際に熱エネルギーが生じます。
説明に関しては以上になります。
解答番号21・22:温室効果ガス
この問題は知識問題です。温室効果ガスを選ぶ問題でした。
代表的な温室効果ガスは二酸化炭素とメタンです。また、オゾン層を破壊する性質があることから冷蔵庫での使用が禁止されたフロンも、温室効果ガスになります。
教科書に登場する温室効果ガスの種類は、教科書会社によって少し異なっていました。
- 数研出版:水蒸気、二酸化炭素、メタン、フロン
- 第一学習社:二酸化炭素、メタン
- 東京書籍:二酸化炭素、フロン、メタン
- 実教出版:水蒸気、二酸化炭素、メタン、フロン
- 啓林館:二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、フロン
第一学習社を使っていた方は、ひょっとしたらフロンを学んでいなかったかもしれません。
解答番号23:二酸化炭素濃度変化のグラフ
この問題は表の読み取り&考察問題です。大気中の二酸化炭素濃度変化に関する2つの図を読み取り、かつ二酸化炭素濃度の季節変動と植物の光合成の関係を考察する問題でした。
語句埋めが3つあるので、それぞれ見ていきましょう。
2000~2010年における大気中の二酸化炭素濃度の増加速度は、1960~1970年に比べて【サ】。
図2のデータを見ると、二酸化炭素濃度の上昇幅を次のように判断することができるでしょう。
- 1960~1970年:10ppm未満
- 2000~2010年:約20ppm
よって、【サ】は「大きい」と答えることになります。
また、亜熱帯の与那国島では、冷温帯の綾里に比べて、大気中の二酸化炭素濃度の季節変動が【シ】。
図3のデータを見ると、黒丸グラフの与那国島よりも白丸グラフの綾里の方が、年間の二酸化炭素濃度の振れ幅は大きくなっています。よって、振れ幅の小さい与那国島の方が、二酸化炭素濃度の季節変動は「小さい」と答えることになります。
このような季節変動の違いが生じる一因として、季節変動が大きい地域では、一年のうちで植物が光合成を行う期間が【ス】ことが挙げられる。
【ス】は『長い』か『短い』で答える形になっているので、どちらなのかを考察する必要があります。【シ】を解答する際に、亜熱帯(与那国島)よりも冷温帯(綾里)の方が季節変動が大きいと答えているので、亜熱帯植物と冷温帯植物の光合成の活性を考えるとよいでしょう。日本の亜熱帯の植物は一年中常緑であることに対して、冷温帯の植物は冬季に落葉する特徴があります。このことから、季節変動が大きいと答えた冷温帯の綾里では、一年の間で光合成をできる期間は短いと答えることになります。
総括
2020年度のセンター試験生物基礎は、知識問題が減少し考察系の問題が少し増えた傾向があり、来年度から実施される大学入学共通テストを見据えたものだったかもしれません。ただ、考察問題の内容としては図やグラフの読み取りと対照実験であり、今までのセンター生物基礎と大きく変わるものではなかったように思います。また、知識問題に関しては教科書の細かいところを問う内容もあり、例年同様教科書の熟読が求められたとも思います。独立行政法人大学入試センターが発表した平均点一覧を見ましたが、生物基礎は約32/50点でしたので、結果としては2020年度の問題はバランスの取れたものだったと言えるようです。
来年度からの大学入学共通テストでは、生物基礎の出題傾向も大きく変わる可能性は少なからずあります。高校生物同様、初見の問題に対しての解決能力が問われるかもしれません。対策としては、教科書や学校副教材を使った日常学習を基本としつつも、考察系問題を演習することで解決能力を磨くことがよいと思われます。文系の学生方にとっては生物基礎に時間をあまり割きたくないかもしれませんが、他教科とも折り合いをつけて努力を積み重ねていってください。
おわりに
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以上でこの記事は終わりです。ご視聴ありがとうございました。