問題解説

「高校生物」酵素反応速度のグラフの問題の解き方を解説

今回の記事では、高校生物の第1章「細胞と分子」で登場する“酵素の反応速度のグラフ”の問題解説を行います。酵素の反応速度のグラフは、絶対に理解して解けるようになってほしい項目です。この記事を読んで、試験対策を行いましょう。

問題

では、まず問題を解いてみましょう。下のスライドが問題用紙になります。標準解答時間は15分です。15分経っても解けなかった場合は、解答と解説を見ましょう。

スライド1:酵素反応速度のグラフの問題スライド1:酵素反応速度のグラフの問題

問題を解くことができたでしょうか。グラフを選択する問題が多く、悩ましい問題だったと思います。以下の解答を見て答え合わせをし、わからなかったところは解説を読んで確認しましょう。

解答

解答は、下のスライド2のようになります。

スライド2:酵素反応速度のグラフの問題の解答スライド2:酵素反応速度のグラフの問題の解答

解説

問1.“最大反応速度”は生物用語の1つ!

この問題は知識問題です。“最大反応速度”という酵素反応速度論で登場する生物用語を答える問題でした。

最大反応速度Vmax)”は、下のスライド3のようなときの“値”を指します。

スライド3:最大反応速度とミカエリス定数(Km)スライド3:最大反応速度とミカエリス定数(Km)

基質濃度と反応速度のグラフにおいて、最大となっている反応速度のことを、“最大反応速度”と呼ぶ。

この問題には関係ありませんが、Vmaxの半分の反応速度のときの基質濃度を“ミカエリス定数Km)”と呼びます。高校生物の範囲では、Kmは酵素と基質の親和性を示す指標として登場します。簡潔にまとめると、以下のスライド4のようになります。

スライド4:Kmが小さいほど、酵素と基質の親和性は高いスライド4:Kmが小さいほど、酵素と基質の親和性は高い

Kmの問題は、たまに難関大学で見受けられます。高校生物の教科書では取り扱いがないので、発展的な考察問題として登場するみたいですね。

問2.最大反応速度では、酵素はすべて酵素-基質複合体!

この問題は論述問題です。最大反応速度のときの酵素と基質の状態を簡潔に論述する問題でした。

最大反応速度のときの基質濃度では、下のスライド5のように、すべての酵素とすべての基質は結合して“酵素-基質複合体”の状態になっています。

スライド5:最大反応速度ではすべての酵素とすべての基質は結合しているスライド5:最大反応速度ではすべての酵素とすべての基質は結合している

よって、

すべての酵素はすべての基質と結合して、酵素-基質結合体になっている。

と、簡潔に論述すれば問題ありません。

なお、最大反応速度のときの基質濃度よりも高い基質濃度では、下のスライド6のように基質があふれています。

スライド6:Vmaxのときの基質濃度より高い基質濃度では基質があふれているスライド6:Vmaxのときの基質濃度より高い基質濃度では基質があふれている

酵素反応速度論を理解する上では、スライド5やスライド6のような反応液中の状態を理解しておくとよいです。直接の解答にはなりませんが、基質濃度と反応速度の関係をより理解することにつながります。

問3.酵素濃度2倍なら、反応速度が2倍になる!

この問題はグラフの問題です。酵素濃度が2倍になったときのグラフを選ぶ問題でした。

図1の基準となっているグラフaにおいて、酵素濃度が2倍になるとグラフcになります。改めて図で確認すると、下のスライド7のようになります。

スライド7:酵素濃度が2倍なら反応速度は2倍になるスライド7:酵素濃度が2倍なら反応速度は2倍になる

グラフをそのまま覚えてもよいのですが、コツを理解すると答えやすくなります。そのコツとは、“酵素を社員として考えること”です。

社員が2倍になれば、仕事の処理速度は2倍になる。

この考え方を知っておけば、酵素濃度が半分になったときも次のようにイメージできます。

社員が半分になれば、仕事の処理速度は半分になる。

よって、酵素濃度が1/2になったとき、グラフの高さが基準から半分になったものを選べばよいというかんじになります。

酵素を社員と例えてみると、反応速度の変化が非常にわかりやすい。

問4.競争的阻害時のグラフを選ぶ!

この問題はグラフの問題です。競争的阻害が起きているときの反応速度のグラフを選ぶ問題でした。

問題文にある「基質と化学構造が似ており、活性部位と結合する物質を加えた場合」とは、競争的阻害が起こる条件のことを指します。競争的阻害が起こる場合は、基準のグラフaに対して、グラフeのようになります。改めて確認すると、下のスライド8のようになります。

スライド8:競争的阻害の場合の反応速度の変化スライド8:競争的阻害の場合の反応速度の変化

グラフeの特徴としては、“基質濃度がある程度高くなるまでは競争的阻害で反応速度が低下している”ということになります。

一応復習ですが、競争的阻害についての理解を深めるためのスライドを用意しました。下のスライド9になります。

スライド9:競争的阻害をイメージしてみる(確率論)スライド9:競争的阻害をイメージしてみる(確率論)

もっと簡単に言うと、椅子取りゲームに例えることができます。

酵素の活性部位を1つの椅子に例えて椅子取りゲームを繰り返すとき、

  • 基質3人、阻害物質5人なら、阻害物質が座る可能性が少し高い。つまり、阻害の影響を受ける。
  • 基質1000人、阻害物質5人なら、基質が座る可能性が圧倒的に高い。つまり、阻害の影響はほぼなくなる。

こんな感じで、競争的阻害を理解しておきましょう。

競争的阻害を受けた場合のグラフは、競争的阻害の特徴を持つグラフを選ぶだけで済む。

問5.非競争的阻害時のグラフを選ぶ!

この問題はグラフの問題です。非競争的阻害が起きているときの反応速度のグラフを選ぶ問題でした。

問題文にある「酵素の活性部位とは異なる部位に結合し、酵素活性を低下させる物質を加えた場合」とは、非競争的阻害が起こる条件のことを指します。非競争的阻害が起こる場合は、基準のグラフaに対して、グラフeのようになります。改めて確認すると、下のスライド10のようになります。

スライド10:非競争的阻害が起きているときのグラフスライド10:非競争的阻害が起きているときのグラフ

グラフfのように、非競争的阻害では基質濃度に関わらず一定の阻害を受けるので、反応速度はどの濃度でも低下する特徴があります。

非競争的阻害も一応復習しておきましょう。非競争的阻害の基本は、下のスライド11のようになります。

スライド11:非競争的阻害の基本スライド11:非競争的阻害の基本

非競争的阻害も、やや無理やりに椅子取りゲームに例えることができます。

椅子とヒトは2種類ずつある。

  • “活性部位”という椅子、活性部位にしか座らない基質さん
  • “阻害物質が結合する部位”という椅子、ここにしか座らない阻害物質さん

椅子取りゲームが始まると、

  • 活性部位には、基質さんしか座らない。しかし、阻害部位に阻害物質さんが座ると、活性部位さんの椅子はなくなる。
  • 阻害部位には、阻害物質さんしか座らない。

基質さんが活性部位に座ろうとしても、阻害物質さんが座っていると、活性部位に座ることができない。

※やはり椅子取りゲームで非競争的阻害を説明するのは難しいようですね…。

非競争的阻害を受けた場合のグラフは、非競争的阻害の特徴を持つグラフを選ぶだけで済む。

問6.すべて生成物になったら、生成物量に変化はない!

この問題は論述問題です。図2において、途中から生成物量が変化しなくなる理由を簡潔に述べる問題でした。

理由は簡単で、次の通りになります。

すべての基質が、酵素によって触媒され、生成物となったため。

酵素と基質の反応を、改めてスライドで見てみると、下のスライド12のようになります。

スライド12:基質と酵素の反応のイメージスライド12:基質と酵素の反応のイメージ

このように、基質と酵素の反応では、

  • 基質は、酵素の作用によって、生成物になる
  • 酵素は、反応の前後で変化しない

という特徴があります。

このおさらいでイメージができたら、基質がなくなったら生成物は増えないことがわかると思います。もっとわかりやすくすると、下のスライド13のようになります。

スライド13:基質は酵素によって生成物になっていくスライド13:基質は酵素によって生成物になっていく

スライド13では、時間経過とともに、基質が生成物になっていく様子を描いているつもりです。

酵素によって基質がすべて生成物になったら、生成物はそれ以上増えない。理由は、基質がなくなったから!

問7.酵素2倍→反応速度2倍→時間は半減!

この問題はグラフの問題です。反応時間と生成物量のグラフにおいて、酵素の量を2倍にしたときのグラフを選ぶ問題でした。

反応時間と生成物量のグラフにおいて、酵素量が2倍に変化すると、下のスライド14のように変化します。

スライド14:酵素量が2倍になると、反応時間は半分になるスライド14:酵素量が2倍になると、反応時間は半分になる

反応時間が半分で済み、基質量は変わっていないので最終的な生成物量が同じグラフを選ぶことになります。ちなみにスライド14のグラフの意味を補足すると、生成物量が横ばいになった瞬間に、酵素反応は終わっているというようになっています。

なお、酵素量だけを2倍にすると反応時間が半分になるのは、次のような例えでイメージすることができます。

社員が2倍に増えれば、仕事の速度は2倍になり、半分の時間で済む。しかし、作業対象の量は変わっていないので、できあがる物の量は同じまま。

酵素量だけが2倍になった場合、反応時間は半分になる。反応時間だけが半分になっているグラフを選ぶとよい。

問8.基質量2倍→生成物量2倍で時間も2倍!

この問題はグラフの問題です。反応時間と生成物量のグラフにおいて、基質の量を2倍にしたときのグラフを選ぶ問題でした。

反応時間と生成物量のグラフにおいて、基質の量が2倍に変化すると、下のスライド15のように変化します。反応時間が2倍になり、生成物量が2倍になっているグラフを選ぶことになります。

スライド15:基質量が2倍になると、反応時間と生成物量は2倍になるスライド15:基質量が2倍になると、反応時間と生成物量は2倍になる

なお、基質量だけを2倍にすると反応時間と生成物量が2倍になるのは、次のような例えでイメージすることができます。

作業対象が2倍に増えたので、できあがる物の量は2倍になる。ただし、社員数は変わらないので、当然作業時間も2倍になる。

基質の量だけが2倍になった場合、2倍の反応時間をかけて生成物量は2倍になる。生成物量が2倍になり、反応時間も2倍になっているグラフを選ぶとよい。

補足:アロステリック酵素の反応速度のグラフ

(準備中)

一般に、アロステリック酵素の反応速度のグラフはS字状になります。

総括

酵素反応速度のグラフの問題は、今回取り扱った問題のように1つの図にたくさんのグラフが描かれていていずれかを選ぶようなパターンが多いです。理解ができていない方にとっては、どのグラフを選べばよいのか非常に悩ましいと思います。この記事を経て、酵素反応速度のグラフの基礎をしっかりと押さえると、今後のためになると思います。

今回はグラフを選択するパターン、つまりセンター試験のような問題にしました。しかし、国公立二次試験では、自分でグラフを描くような問題も見受けられます。なので、単純にグラフを選ぶことができるだけでなく、基準のグラフに対して問題で問われたグラフを描けるようになることも必要になります。

ちなみに、“基質濃度と反応速度のグラフ”と“反応時間と生成物量のグラフ”は異なるものです。それぞれの解き方を理解しておきましょう。間違えやすい例としては、ある変化、例えば酵素量が2倍になるとき、両方で同じグラフを選ぶことです。このようなことがないように深く理解して、問題を解くときは注意しましょう。

アンケート+おすすめ記事紹介

アンケートにご協力ください!

よかったら、勉強の役に立ったかどうかについて、下のアンケート投票をお願いします。

この記事(酵素反応速度問題解説)は勉強の役に立ちましたか?

やるべき問題 and おすすめ参考書・問題集

管理人セレクトの「生物基礎の問題やるべき集」を記事にしました。勉強の役に立ててください。

「高校生物基礎」生物基礎の計算・グラフ・実験の問題これはやるべき集※2018年8月9日記事作成開始、2019年4月30日⑨を更新。 塾講師経験のある管理人が、受験生に向けて、どんな生物基礎の計算問...
「高校生物基礎・生物」目的別おすすめ参考書・問題集by管理人シカマル はじめに 今回は、高校生物基礎・生物を勉強するうえで役にたつ参考書・問題集を紹介したいと思います。生物基礎と生物において目的別に紹...

気軽にコメントどうぞ!

下にスクロールすると、コメント欄があります。この記事の質問や間違いの指摘などで、コメントをしてください。なお、返信には時間がかかる場合があります、ご容赦ください。

以上で終わりです。ご視聴ありがとうございました。

お役に立てたらSNSボタンでシェアしてくださいね!
あなたの応援が励みになります!よろしくお願いします!
関連記事

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です