第9章「生物の進化と系統」

「高校生物」分子進化(分子時計)の計算問題の解き方を解説

今回は、「高校生物」の第5編の“生物の進化と系統”に登場する分子進化(分子時計)の計算問題の解き方を紹介します。定番問題のポイントをわかりやすく解説しているので、是非活用してください。

演習問題

まずは演習問題として、下のスライド1を解いてみましょう。目標解答時間は15分です。時間が経っても解けない場合は、すぐに解答・解説を見ましょう。

スライド1:分子進化(分子時計)の計算問題の演習問題スライド1:分子進化(分子時計)の計算問題の演習問題

解き具合はいかがでしたか? 問題1と問題2は基本問題で、問題3は少しだけ発展的な問題でした。解けた方も解けなかった方も、解答と解説を見て確認しましょう。

なお、このテーマによく見られる考察問題の解説を最後につけておいたので、それもあわせて確認するとよいかもしれません。

解答

解答は下のスライド2のようになります。

スライド2:分子進化(分子時計)の計算問題の解答スライド2:分子進化(分子時計)の計算問題の解答

解説

問題1.分岐する年代を答える典型問題!

この問題は計算問題です。解き方を知らないと解くのは難しかったと思います。この手の問題の解き方を理解し覚えましょう。

まず、アミノ酸がヒトとイヌにおいて20個違うとはどのようなことを指すのか、これを理解することから始まります。図で表すと、スライド3のようになります。

スライド3:2つの生物におけるアミノ酸置換数の考え方スライド3:2つの生物におけるアミノ酸置換数の考え方

このように考えると、今回の場合は10個のアミノ酸が共通の祖先から現在に至るまでに置換した数だと考えることができます。

あとは、問題文にアミノ酸が1つ置換するのにかかる時間が1000万年だと書いてあるので、分岐した年代を答える計算式は、

  • 1000万年×10個アミノ酸置換数=1億年

と答えることができます。

大事なのは、“共通の祖先から現在に至るまでアミノ酸が何個置換したのか”を正確に求めることです。これに関しては、上記の考え方が必要であり、また生物を3種以上比較する場合は少し発展した考え方が必要になります。問題3で解説しているので、合わせて読むとよいでしょう。

問題2.アミノ酸の置換にかかる年数を答える典型問題!

この問題は計算問題です。問題1では分岐した年代を答えましたが、今回は逆にアミノ酸が1つ置換するのにかかる時間を求める問題でした。

考え方そのものは、問題1と変わりません。解き方は、下のスライド4のようになります。

スライド4:アミノ酸が1つ置換するのにかかる時間の計算の考え方スライド4:アミノ酸が1つ置換するのにかかる時間の計算の考え方

共通の祖先から分岐した4億年前から現在に至るまで、1種の生物では40個のアミノ酸が置換したと考えて、計算式は、

  • 4億年÷40=1000万年

となります。

共通の祖先から分岐するときにアミノ酸1つが置換するのにかかる時間は、ほぼどの問題でも1000万年と設定されています。管理人はよく知りませんが、おそらく生物学の通説なのではないでしょうか。なので、答えが1000万年とならないときは計算式を見直したり、計算式そのものを立てることができない場合は1000万年と答えてしまうのもよいでしょう。ただし、まれに1000万年ではない場合もあるので、注意が必要です。

問題3(1).数値をもとに分子系統樹を完成させよう!

この問題は表の読み取り問題です。アミノ酸の置換数から系統関係を答える問題でした。

系統樹にはウシが書かれているので、解き方の方針としてはウシを基準にするのがよいでしょう。つまり、“ウシを基準に異なるアミノ酸が少ないほど近縁で、多いほど遠い系統である”と捉えるのがよいでしょう。

このように考えると、下のスライド5のように考えることができます。

スライド5:近縁関係を導くためには、異なるアミノ酸数を見るスライド5:近縁関係を導くためには、異なるアミノ酸数を見る

近縁関係がわかったので、あとは図に当てはめて解答となります。

近縁関係は異なるアミノ酸の数値から求めるのがセオリーです。ちなみに答えを確認する手段としては、系統の知識を使うのも悪くありません。ウシとカンガルーは哺乳類、カモノハシは爬虫類の痕跡が残る哺乳類、コイは魚類という知識があれば、ミスの確認をすることができます。

問題3(2).置換の年数を求めてから分岐年代を答える!

この問題は計算問題です。問題1のやや発展になります。

まず、誤答を紹介します。

  • アミノ酸が1つ置換するのにかかる時間は、ウシとカンガルーが共通の祖先から13個ずつアミノ酸置換して、分岐年代が1.3憶年前だから1000万年だろう。(正)
  • ウシとカモノハシ(Y)は、アミノ酸が43個異なる。よって、共通の祖先からはアミノ酸が、43÷2=21.5個変わったのだろう。(
  • あとはアミノ酸が置換するのにかかる年数1000万年をかけて、2億1500万年だろう。(

途中までは考え方は合っています。1行目のアミノ酸が1つ置換するのにかかる時間が1000万年のところまでです。それ以降は誤っており、もう一工夫しなければなりません。

その工夫とは、“ウシとカモノハシ(Y)の分岐年代を考えるとき、カンガルー(X)も一緒に考える”というものです。ウシとカモノハシの共通祖先はカンガルーにとっても共通祖先であることが理由です。なので、2つの生物だけを考慮するのではなく、カンガルーも含めた3種の生物を考慮する必要がありました。

なので、考え方は次の通りになります。

  • アミノ酸が1つ置換するのにかかる時間は、ウシとカンガルーが共通の祖先から13個ずつアミノ酸置換して、分岐年代が1.3憶年前だから1000万年だろう。(正)
  • ウシとカモノハシ、カモノハシとカンガルーは、アミノ酸が平均46個異なる。よって、共通の祖先からはアミノ酸が、46÷2=23個変わったのだろう。(正)
  • あとはアミノ酸が置換するのにかかる年数1000万年をかけて、2.3億年だろう。(正)

なお、アミノ酸が平均46個異なるとは、表のなかのウシとカモノハシの43と、カモノハシとカンガルーの49を足して2で割った数になります。

3種の生物を考えるときにこんな考え方をしないといけないのは、“分子系統樹の進化的距離(アミノ酸置換数)が等しい”という前提があるからです。つまり、共通の祖先から分岐したときの2種の生物の異なるアミノ酸の数は同じということになりあます。この文言はリード文に書いてあることもありますが、解き方として理解しておいた方がよいでしょう。

問題3(3).分子時計の典型的な描写問題!

この問題は作図問題です。アミノ酸置換数を図に描き加える問題でした。

まずは、分岐点までのアミノ酸置換数を求める必要があります。分岐点とは、

  • ウシとカンガルー(X)の分岐点
  • ウシ・カンガルーとカモノハシ(Y)の分岐点
  • ウシ・カンガルー・カモノハシとコイ(Z)の分岐点

の3つを指します。これらの求め方は、下のスライド6のようになります。

スライド6:分岐点からのアミノ酸置換数の求め方スライド6:分岐点からのアミノ酸置換数の求め方

スライド6の2つ目までは、これまでの問題と同様なのでわかると思います。一方で、3つ目は新しい要素です。ただ考え方は同じであり、

  • 分岐点までの共通祖先すべてを含めること
  • データとしてある数値の数で割って平均を取ること

に従っています。

あとはパズルのように組み合わせると、解答のようになります。このとき、分岐点からの進化的距離は等しいことを忘れないようにしてください。

“データとしてある数値の数で割って平均を取ること”を理解すれば、何の数で割ればよいかわかるようになります。

典型考察

典型考察問題

  1. ヘモグロビンα鎖のアミノ酸配列を比較すると、多くの動物で非常によく似た配列が存在する。その理由を答えなさい。
  2. アミノ酸配列の変化を伴わない置換(同義置換)の速度は、アミノ酸の置換を伴う置換(非同義置換)の速度より大きい。その理由を中立説の立場から答えなさい。

解答

  1. そのアミノ酸配列がヘモグロビンα鎖の機能に重要で、それが変異すると生存に不利になるため。
  2. 非同義置換は表現型に影響を与えることがあり、生存に不利な突然変異の場合は自然選択が働き排除されるため、集団内に残りにくく、進化速度の値は小さくなる。これに対して、同義置換は表現型に影響せず、生存にとって有利でも不利でもない中立的なものであるため、自然選択は働かない。したがって、集団内で偶然に蓄積して広がることがあるため、非同義置換と比べると進化速度の値が大きくなる。

解説・補足

  1. タンパク質の機能で重要なのは、タンパク質中の特定の部位の形状および特定のアミノ酸である。そのため、その機能部位のアミノ酸配列は進化の過程で残りやすい。
  2. ①と理由はほぼ同じ。高校生物の教科書レベルではタンパク質の機能に関しての説明が不十分なので、興味がある方は大学レベルの専門書を読まれるとよい。

総括

今回の問題を初めて解いた方は、解き方がわからずに苦労したと思います。ただ、問題の出方はおおよそこんなかんじなので、解けるようになっておくことが望ましいです。特に、高校生物の第5章「進化と系統」では数少ない計算問題の1つで頻出事項なので、問題の重要度は高いと言えるでしょう。

高校生物第5章のもう1つのテーマは“ハーディー・ワインベルグの法則と遺伝子頻度”の問題です。あわせて確認してみてはどうでしょうか?

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